ヘレン・マクロイ『あなたは誰?』刊行予定

 ヘレン・マクロイの『あなたは誰?』(原題:Who’s Calling?)が9月にちくま文庫から刊行の予定です。
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 B・A・パイクもマクロイの傑作の一つとして挙げている作品であり、ベイジル・ウィリング博士が精神科医探偵としての個性と能力をフルに発揮した作品としてシリーズ中でも特別な位置を占めるものといえるでしょう。
 訳出に当たっては、ウィリアム・モロウ社の米初版(1942年)を底本に用い、英ゴランツ社の改訂版(1973年)も参照しました。米初版には第二次大戦関連の言及があちこちに出てきますが、改訂版ではその多くが削除されています。但し、改訂版には初版にない章題が加筆されているため、これは翻訳でもゴランツ社版から補って加筆しました。
 
 ストーリーのさわりをご紹介すれば・・・

 ニューヨークのナイトクラブの歌手、フリーダ・フレイは、アーチーという精神科医の卵と婚約していた。アーチーの母親に挨拶するため出発する直前、フリーダに謎の電話がかかり、現地に行けばあらゆる不快なことが待っていると脅される。フリーダはその声に聞き覚えがなかった。彼女は警告を無視してアーチーとともにウィロウ・スプリングにやってくる。
 アーチーの母親、イヴはロマンス小説作家だったが、アーチーの進路の妨げとなるフリーダを内心嫌っていた。二人が到着した晩、フリーダの部屋に再び謎の電話がかかるが、電話は屋内の内線を使ってかけられたものと分かる。フリーダがアーチーを探しに部屋から離れたすきに、彼女の部屋は何者かによって荒らされる・・・。

 事件はその後、殺人へと発展していきますが、あとは本編をお読みいただいてのお楽しみということでご容赦ください。

 なお、本作の刊行にあたっては、編集者の藤原義也氏に多大のご尽力を賜りました。完成に至るまでのプロセスはまさに藤原氏との共同作業であり、改めて藤原氏にこの場を借りて厚く御礼申し上げる次第です。



初版ジャケット
ウィリアム・モロウ社初版ダスト・ジャケット


余談ながら、私の所持する“Who’s Calling?”初版には、ジムという男性に宛てたマクロイのサインが書き込まれています。
サイン
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ヘレン・マクロイ 『あなたは誰?』刊行

 ヘレン・マクロイの『あなたは誰?』(原題:Who’s Calling?)がちくま文庫から刊行されました。ベイジル・ウィリング博士が登場する4作目の長編です。
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 『死の舞踏』でデビューしたウィリング博士は、初期作では、精神科医探偵らしく、心理学的な分析を縦横に駆使した推理を披露してくれることが多いのですが、時代が下るにつれ、『小鬼の市』のように、第二次大戦を背景にエスピオナージュ的な活動に従事したり、『暗い鏡の中に』のように、オカルト的な雰囲気を湛えた不可能犯罪の謎に挑んだりと、次第に精神科医としての領分にとどまらない活躍を見せるようになっていきます。こうした活躍ぶりももちろん見どころが多いのですが、芸域が広がると同時に博士本来の個性がやや希薄化し、ごく普通の謎解き型探偵へと脱皮していった面もあるようです。
 『あなたは誰?』は、マクロイがウィリング博士の個性を確立すべく意気込んでいた時期の作品として、このシリーズならではの心理学的な謎と、博士が精神科医探偵としての本領を最大限に発揮した重厚な謎解きの醍醐味を味わうことのできる傑作と言えます。博士のカリスマ的な能力と魅力が最も典型的に打ち出されたこの作品を知らずして、ウィリング博士について語ることはできないと言っても過言ではないでしょう。
 登場人物の描き分けの巧みさも見どころの一つで、不幸な生い立ちを背負うナイトクラブの歌手フリーダ、息子の自立を願いながら結婚に内心抵抗しているロマンス小説作家イヴ、自分の意思を封印しながら政治活動を続ける上院議員マーク、夫を通じて政治的野心を満たそうとするその妻ジュリアなど、多彩な人間模様が複雑なプロットを支えています。
 どう見ても殺されるはずのない人物の毒殺という中心的な謎を、不気味な匿名電話やポルターガイストの跳梁というサスペンスフルな展開で盛り上げる筋運びも特筆すべきもので、弛緩することのないストーリー展開にきっと唸らされることでしょう。シリーズの本流とも言うべきオリジナリティに溢れた心理学的推理を多くの読者の皆さんに楽しんでいただければ幸いです。


あなたは誰?

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『あなたは誰?』翻訳裏話――訳注は最小限に(未読の方はネタバレ注意)

 『あなたは誰?』の翻訳にあたっては、編集者の藤原氏とのやりとりの中で学ぶことが本当に多かった。例えば、訳注の扱い方がそうだ。ROM叢書で訳した『オシリスの眼』や『キャッツ・アイ』は、歴史の知識がある程度前提にないと理解が難しいところもあり、けっこうこまめに訳注を入れたし、解説でも説明をかなり書き込んだものだ。その癖を引きずったせいもあってか、『あなたは誰?』でも、当初はけっこう細かい訳注をあちこちに入れていた。すると、藤原氏から訳注は最小限にしたほうがいいとのご助言があり、これは改めて眺めてみて、そのとおりだと思ったものだ。
 なにしろ、得意の分野の言葉などが出てくると、つい嬉々として細かい訳注を入れたくなるのは人情というもの。これはまったく自分の身勝手な癖にすぎないのだが、やっているうちは自覚がないものだ(笑)。例えば、ホール=ミルズ殺人事件などと出てくると、すわこそとばかりに事件の顛末を細々と訳注で入れてしまったのだが、改めてよくよく見ると、それだけでストーリーになるくらいの訳注。学術書ではあるまいし、小説で長々と訳注が入っていると、かえって煩わしい。さらに言えば、最初は「ジョー・ディマジオ」にも訳注を入れていたのだが、マリリン・モンローの夫でもあった著名な大リーガーにまで説明を加えるのはほとんど蛇足というものだろう。そんなこんなで見直して、訳注を簡略化したり省いたおかげで、随分と流れがスムーズになったと感じている。
 自分でも最初から諦めて入れなかった訳注もけっこうあるのだが、そんな言葉や固有名詞をあとがきであれこれ解説するのも、これまた煩雑。結局説明しないまま終わり、ちょっと心残りになっている言葉も実はあったりする。そこで、そんな言葉の解説を、余談ということで、少しばかりここで補足してみたい。もちろん、こんなのをいちいち訳注で入れていたら、「うざい!」と思われた読者が多かったに違いない(笑)。
 犬のターは、ター・ベビー(Tar Baby)と呼ばれているが、これはジョエル・チャンドラー・ハリスというアメリカ南部出身の作家が1881年に編纂した民話「アンクル・リーマス」に登場する、タールの塊で出来た人形の名に由来する。ブラー・ラビットといういたずら者のうさぎが、罠で仕掛けられたタール人形にまんまと引っかかり、タールがくっついて離れなくなってしまうのだが、機知を働かせて抜け出すというストーリーだ。ここから転じて、「ター・ベビー」は、抜き差しならぬ泥沼状態や、くっついて離れないものを表したりもする。しつこくつきまとって離れようとしない子犬(もちろん黒い犬だ)をその名で呼んでいるのは、こうした背景が分かると理解しやすいだろう。
 フリーダが借りた部屋にはコマドリ(コック・ロビン)とスズメを描いた刺繍が飾られているが、言うまでもなく、これはマザー・グースの歌をモチーフにしたもので、ヴァン・ダインの『僧正殺人事件』やエリザベス・フェラーズの『私が見たと蠅は言う』、最近新訳が出たフィルポッツの『だれがコマドリを殺したのか?』など、これを題材にした推理小説も幾つかある。さりげなく触れられているので、気づかずに過ぎてしまいそうだが、この刺繍、おそらくはスズメがコマドリを弓矢で射殺す場面が描かれているのではないだろうか。マクロイがいたずら気を起こして、ここにひそかに暗示を採り入れたと考えるのは穿ちすぎの見方だろうか・・・。
 本作で心理学の知識が縦横に駆使されていることはあとがきでも述べたが、実はこれと並んで人類学の知識もプロット上、重要な役割を演じている。もともと入れるつもりだった訳注を省いただけでなく、ネタバレに限りなく近づきそうなのに気づき、敢えてあとがきでも触れなかったのだが。
 「類感呪術」という言葉がフリーダのカリカチュアの文脈で出てくるが、これは「感染呪術」と並んでジェイムズ・フレイザーが造った術語で、その著『金枝篇』の「第三章 共感呪術」において詳しく論じられている(完全版の第一巻)。簡単に言えば、相手に似た像を傷つけたり破壊することでその人間を傷つけたり殺そうと試みるのが「類感呪術」、毛髪や爪など、体から分離したものを通じて元の持ち主に影響を及ぼそうと試みるのが「感染呪術」だ。そのことに気づくと、実はこれが重要な手がかりであることが分かってくる(ウィリング博士は謎解きで説明してはいないのだが)。博覧強記のマクロイらしいが、この点について訳注を入れるのは、単に煩雑というだけでなく、かえって親切すぎてネタ割れを促しかねないし、省いてよかったと今は思っている。文化人類学の知識があれば気づく人もいるだろうし、それで解決を洞察できたら、その人にとってもご満悦というものだろう(笑)。(なお、同じ文脈で出てくる「ポペット」については、“Alias Basil Willing”にも出てくる。やはり呪詛の手段としてだ。)
 『金枝篇』の邦訳は、ちくま学芸文庫から1890年の初版からの翻訳が出ていて、これは文庫で上下二巻。フレイザーはその後、増補を繰り返し、1915年までに12巻に膨れ上がり、1936年に補遺を追加した最終版は原書で全13巻という大著となった。完全版の翻訳は、現在、国書刊行会から順次刊行中であり、別巻含め10巻を超えるものになる予定らしい。岩波文庫から全5巻で出ている翻訳は1922年刊の簡約本の訳である。リンゼイ上院議員は20代の頃から読み始めたというから、手にしていたのはおそらく浩瀚な1915年版ではないだろうか。議員のみならず、途中で挫折した人はきっとたくさんいるに違いない(笑)。
 心理学、人類学に加えて、マクロイは哲学にも造詣が深かったようだ。フランスの哲学者、アンリ・ルイ・ベルクソンの『笑い』の引用については、(たまたま自分の手元にあったためでもあるが)白水社の『ベルグソン全集』(今は「ベルクソン」と表記されることが多い)の旧訳から訳文をお借りしたのだが、実は白水社からは別の訳者による新訳が出ている。敢えて旧訳を使わせていただいたのは、新訳では肝心の言葉を「塩基性の泡」と訳しているからだ。これはいけない。「塩を基にした」と「塩基性」では意味が全く違ってしまう。原文は‘saline’。『笑い』のフランス語原文では、‘une mousse base de sel’。そんなわけで、新訳の表現はお借りしたくてもできなかったのだ。(ちなみに、岩波文庫の林達夫訳では「塩分を含んだ泡」) ベルクソンの著作は、最近、ちくま学芸文庫からも続々と新訳が出ているので、『笑い』もいずれ同文庫から出るかもしれない。ちなみに、マクロイはソルボンヌ大学に在学していたことがあるし、ベルクソンの著書にも親しんでいたのだろう。私も『創造的進化』をはじめ、ベルクソンの著書には学生時代から親しんできたせいか、本当はたっぷり訳注を入れたくて仕方なかった。残念!(笑)
 そのほか、サルペトリエール学派とナンシー学派の論争なども、本筋とは何の関係もないのに、つい訳注で詳しく解説したくなったものだが、知らない言葉が出てきたら自ら調べるのも読書の楽しみというものだろう。マクロイ自身も語っているように、省けるものはすべて省くに越したことはないようだ。
 それにしても、一冊の本を仕上げるというのは、本当に多くの方々の共同作業によるものなのだということを、今回の経験を通じて改めて実感したように思う。編集者の方、装丁担当の方、装画担当の方をはじめ、本が形になるまでのプロセスに関わった方々のご尽力に思いを致すと、翻訳を担当した自分の役割など、実は全体のほんのごく一部にすぎないのではないかとすら思えるほどだ。余談ながら、雰囲気をうまく醸し出した素敵な装丁を拝見した時は、なにやらお株を奪われたような気分になったほどである。

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マクロイ『あなたは誰?』手がかり索引(ネタバレあり)

※『あなたは誰?』のプロットの詳細を明かしていますので、未読の方はご注意ください。


 『あなたは誰?』が刊行されてひと月が経ち、多くの読者の方々のご好評をいただいていることに心から感謝申し上げたいと存じます。
 感想なども既にいろんなところにアップされているようですが、管見の限りでは、自分が思いもよらなかった洞察を示しておられるような鋭い書評を目にする一方で、ちょっとした見落としが気になる感想なども目についたりします。特に手がかりの所在については、マクロイは必ずしもすべてをウィリング博士の謎解きの中で丁寧に明かしているわけではないため、漫然と読み流していると最後まで気づかずに終わる場合もあるようです。なにしろミステリは娯楽作品、学術書のように丹念にアンダーラインや書き込みをしながら読むものでもありませんから、それも無理からぬというものでしょう。
 そこで、既に読み終わった読者の方への便宜を図る意味と自分自身の整理も兼ねて、この機会に、デイリー・キングの「オベリスト」シリーズのひそみにならい、ウィリング博士が必ずしも指摘していない手がかりを中心に整理して、『あなたは誰?』の「手がかり索引」を作ってみたいと思います。
 「いままで紹介されたヘレン・マクロイの作品のなかで、最もパズラーすなわち謎解きとしてフェアな作品」という垂野創一郎氏の指摘がいかに正鵠を射たものであるかが、こうした整理からも見えてくれば幸いです。
 なお、頁数はちくま文庫の邦訳に従い、便宜上、犯人をA、その配偶者をBと呼ぶことにします。


・Aが色盲であることについて
 40頁では、Aは邸の正面のテラスから大砲を毎日見ていると語るのに対し、別の人物はそんなものがあるのに気づかなかったと語る。
 220頁では、その大砲がピンクとイエローの迷彩を施されていると説明されている。
 この二点を総合すれば、Aが中間色を識別できない色盲ではないかと推測することが可能である。
 Aが大砲の迷彩に気づかない事実は、クライマックスの317頁で初めて明かされるため、これは手がかりのあとだしではないかという指摘は、これらの箇所の手がかりを見落としているわけだが、単に漫然と見落としたというわけではなく、マクロイの提示の仕方の巧妙さによる面もあるだろう。もし迷彩の描写が先に出てきて、そのあとに、Aには大砲が見えたという事実が明かされていれば、容易に気づく読者も少なくなかったはずだ。その順序を逆にすることで、容易に気づけないまま見過ごすように仕掛けられていることが分かる。

・被害者の好物がショコラ・リキュールであることについて
 115頁で、被害者は夕食会の席上、同席した人たちに対してショコラ・リキュールに目がないことを嬉しそうに語る。
 無論、被害者を子どもの頃から知る人たちは、彼が甘いものに目がないことを知っていたはずだが、そうでなくとも、被害者がショコラ・リキュールを目にすれば食べてしまうであろうことは、この夕食会に同席していた者なら、彼の発言から容易に予測できた。

・ストリキニーネの出所について
 25頁では、Aの父親が肺炎で死んだとの言及が出てくる。
 ストリキニーネは、ごく少量では中枢興奮作用を持つものの、毒性が極めて強いため、今日では薬剤として使用されることはほとんどなく、この手がかりだけでは肺炎の際に使用した強心剤がそのまま残っていたという推測は難しいだろう。ただ、224頁で、ストリキニーネがあれば投与していたという記述が出てくることから、ストリキニーネが薬剤としての効果も持ち、当時は使用されていたことが示唆されてはいる。

・Bがルボフであることについて
 131頁では、夜食室で「BとAは、ほかに四人が座っている大きなテーブルに着いていた」と記されている。
 200頁では、「そこのテーブルでルボフが五人の客と一緒にいるところを見た」という夜食室にいたウェイターの証言が出てくる。
 これもあまりに見え見えの手がかりであり、出てくる順序が逆であれば、容易に気づきそうなものなのだが、やはり順序のせいで漫然と見過ごしてしまうように仕掛けられている。B本人がウェイターの証言を引用していることも強力なカムフラージュと言えるだろう。
 (自明すぎて蛇足かもしれないが、一つ補足しておこう。Bがルボフであり、B本人がそのことを自覚していないらしいことに気づけば、第九章でウィリング博士が二重人格の説明を行った時点で、自ずと二重人格者はBであることが推測できるはずだ。これも、ウィリング博士の説明、ウェイターの証言、実際のテーブル着席者、という順序で出てきたなら、ほとんどの読者が真相に気づいたに違いない。)

・フリーダのカリカチュアを描いた人物について
 194頁では、Bが23歳の頃から『金枝篇』を読みたいと思っていて、306頁では、ようやく第一巻を読み終えたという記述が出てくる。
 239頁以降では、短剣を突き刺されたフリーダを描いたスケッチが「類感呪術」を表したものであることが示唆されている。
 「類感呪術」は、『金枝篇』の第一巻で説明の出てくる呪術信仰の形態であり、まさに同書を読んでいたBがこれに触発されて描いたことが推測できる。但し、その推測が可能であるためには、『金枝篇』についての知識が必要ではあるのだが。

・Aが二重人格の正体を知っていることについて
 第十章「誰も眠れない」では、主要容疑者五人のうち、四人までが、自分こそが二重人格者ではないかと自問するシーンが描かれる。ところが、Bを含む三人は、いずれも自分自身の独白としてその疑いを表すの対し、Aだけは、Bに対する語りかけの中でその疑いを口にする。
 ここから、その場面全体が叙述テクニックを駆使したものであり、A以外の三人は、二重人格者の正体を知らず、自分がそうかもしれないと実際に疑っているのに対し、Aだけが実は嘘をついていて、自分がそうではなく、ほかにいると知っていることを示唆する手がかりとなっているわけである。

・二重人格者の存在を示唆する偽の手がかりについて
 そのほか、B以外の登場人物が二重人格者であることを疑わせる偽の手がかりが随所にちりばめられている。イヴを頻繁に襲う頭痛もそうだが、アイランド夫人という空想上の話し相手の実在を主張するテッド少年もそうだ。実際、テッド少年は、177頁で警察からポルターガイストの正体として疑われてもいるのだが、ここから、エラリー・クイーン、アガサ・クリスティなどの有名作品を想起する人も少なくないだろう。マクロイはその可能性を示唆して読者を惑わせることはしても、そんな単純であからさまな解決を実際に採用することはしなかったわけである。

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法月綸太郎氏に『あなたは誰?』を推していただきました

 講談社の雑誌「IN★POCKET」に「文庫翻訳ミステリー・ベスト10」というアンケート調査があるのだが、どうやら2015年のアンケート調査リストにヘレン・マクロイの『あなたは誰?』が載っていなかったらしい。そのせいかどうかは分からないが、同書を挙げていただいたのは、法月綸太郎氏と横井司氏のお二人のみで、川田弥一郎氏は「リストで発見できなかった」ので挙げなかったと言及しておられるようだ。
 編集者の藤原氏からご連絡をいただいて知った次第だが、実は私自身、これまで国内のこうしたアンケート調査にさほど目を向けたことがなく、講談社のこのアンケートの存在自体を認識しておらず、これをきっかけにそんなベスト10があったのかと興味を持ったほどなので、とても文句を言える立場にないと感じている。まだまだ勉強不足でお恥ずかしい。
 リスト漏れの原因としては、おそらく、ちくま文庫からミステリが出るはずがないという思い込みがあったのだろう。見方変えれば、筑摩書房から刊行されたということ自体、それほど画期的なことだったとも言えるわけで、むしろそのことをあらためて認識させていただいたことに感謝すべきかもしれない。あらためて光栄なことと思う。
 法月氏からは、「この時代にこのネタを、こういうアプローチで処理していたことに驚いた。マクロイの先見の明にあらためて脱帽」とのコメントとともに『あなたは誰?』を一位に推していただいた。法月氏のような方からこうしたコメントをいただくと、自分自身の作品選択眼にも自信が持てるというものだし、おおいに励みになる。今後ともますます精進してまいりたい。

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