エリック・ルートリーが選ぶ推理小説ベスト

 ブリーン選のベストを紹介したが、かなり傾向の違う選択として、エリック・ルートリーによるベスト表もご紹介しておこう。これも、気づいた限りでは、邦語で紹介されたことはないと思われる。
 ルートリーは、会衆派教会の牧師で、1970年から71年にかけて、イングランドとウェールズにおける同教会の総長も務めた。神学上の著作も多数あるほか、「ブリティッシュ・ウィークリー」紙において推理小説を含む書評欄を14年にわたって担当した。
 “The Puritan Pleasures of the Detective Story”(1972)という、推理小説を論じた研究書が有名で、ホームズ、ソーンダイク博士、マックス・カラドス、フォーチュン氏、ブラウン神父という古典的な探偵たちから、ベントリー、クロフツ、ロード、クリスティ、セイヤーズ、マーシュ、アリンガムなど、黄金時代の作家たちに至るまでの諸作品を詳しく論じている。
 同書の巻末には、ホームズ、ソーンダイク、ブラウン神父、マックス・カラドスの短編について、事件の性質(他殺、盗難など)や発生場所などを整理した詳細な一覧まで掲載していて、なかなか参考になる。
 ルートリーはさらに、ホームズ物とブラウン神父物を除いた上で、個人的ながらも恩恵を受けた作品として以下の12長編を挙げている。

 ドロシー・セイヤーズ    『ナイン・テイラーズ』
 マイケル・イネス      『ある詩人への挽歌』
 H・C・ベイリー      “Black Land, White Land”
 ナイオ・マーシュ      『ランプリイ家の殺人』
 クリスチアナ・ブランド   『緑は危険』
 G・V・ガルウェイ     “Murder on Leave”
 エラリー・クイーン     『ガラスの村』
 ジョン・ディクスン・カー  『ニューゲイトの花嫁』
 マージェリー・アリンガム  『霧の中の虎』
 スタンリー・ハイランド   『国会議事堂の死体』
 アガサ・クリスティ     『蒼ざめた馬』
 ジョセフィン・テイ     『時の娘』


 ベイリーの長編は、管見の限りでは、“The Bishop’s Crime”がリファレンス・ブック等のベスト表で出てくる一番頻度の高い作品だが、キーティング編“Whodunit?”における「代表作採点簿」と、このルートリーが“Black Land, White Land”を挙げている。私も十年以上前に読んだ長編だが、今なお余韻の残る印象深い作品で、長編作家としてのベイリーの力量が発揮された傑作ではないかと思う。
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