ジャック・フットレル「幽霊の女」(四)

 プロの押し込み強盗、ルビー・レーガンが意識を取り戻すと、分厚い眼鏡を通して並外れて拡大して見える、青い二つの細めた目が自分をまっすぐ見つめているのに気づいた。 その目は、やせ細った顔に落ちくぼんで付いていて、その上には、淡黄色の髪がもじゃもじゃと生えていた。
 「静かにしたまえ」と《思考機械》は言った。「君は安全だし、一日もすれば回復するだろう」
 「あんたは誰だ?」レーガンは疑わしげに問いただした。
 「私は、君を雇った人の代理人だよ。ミルズ氏の書斎から例の書類を手に入れるよう、君を雇った人のね」と科学者は出まかせを言った。「君は私の家にいる。君は医者の手当を受けたが、私は君を見つけると、すぐにここに連れて来たのだ。医者はなにも疑っていないよ。彼は、君が自動車事故で負傷したと思っている。君自身が言ったようにね」
 押し込み強盗は、目を閉じて考えた。大量出血していたせいもあり、ぼんやりとではあったが、過去数時間の出来事の混乱した記憶を次第につなぎ合わせていった。窓から飛び降りて負傷し、ひと気のない道をよろめくように走ってあの家から逃げ、ようやく医者の玄関まで来て倒れ込むと、自分のケガを説明するため、絞り出すように作り話を語ったことを。彼はもう一度、《思考機械》の謎めいた表情を見据えた。なにもかも筋が通っているように思えた。
 「サツには知られてないのか?」といきなり尋ねた。
 「ああ」《思考機械》はきっぱりと答えた。「発砲したのは誰かね?」
 「女の幽霊だ」と押し込み強盗はすぐさま答えた。「だが、撃つつもりはなかったんだろう。俺と同じく、音を立てないよう気をつけてたみたいだからな」
 「むろん、ドアに誰か来たのが聞こえたから、飛び降りたんだね?」
 「あたりめえさ!」とレーガンは語気荒く答えた。「サツにはまだ捕まったことはねえし、前科を作るつもりはねえよ」
 「さて、幽霊の女だが」と科学者は再び言った。「その女のことを話してくれるかね」
 そこで、レーガンは、その夜、書斎で起きた不思議な出来事を思い出すままに語った。「書類は手に入れられなかったよ」と話を締めくくった。
 「君の話だと、幽霊の女は、白ずくめだったそうだね?」
 「そうだ」と答えた。「あの女が本物の幽霊かどうかは分からねえ。だが、あの女が混乱のもとだった」一瞬、沈黙があった。「言っとくが、あの女は幽霊に違いねえ。あの女が部屋に入れたはずがねえんだ。鍵穴かなにかをすり抜けて入ってきたんだよ」
 「それから、彼女は君を名前で呼んだんだね?」
 「ああ。あれが幽霊だと思うもう一つの理由さ。あの女は、どうやって俺の名前を知ったんだ? それに、俺がブツを見つけたかと、なんで尋ねたんだ?」
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