脱線の余談――小説は事実よりも・・・

 ニュースによれば、インド北東部で原因不明の脳疾患が増加しており、患者の3分の1以上が脳卒中、神経症状などの異常を発症し、子どもを含む多くの死者が出ているとのこと。痛ましいニュースであり、決して面白半分に話題にしていいことではないのだが、そこはご容赦願って、敢えてミステリとの関連で取り上げる。
 米疾病対策センターは、29日、果物のライチの収穫時期と患者の増加時期が一致しており、患者の子どもがライチの果樹園や農地で多くの時間を過ごしていたことから、この脳疾患が、ライチに含まれるメチレンシクロプロピルグリシン(MCPG)化合物という有害物質と関係がある可能性を指摘しているとのこと。
 MCPGは、重度の低血糖症などの原因になると考えられており、同センターは、西インド諸島と西アフリカで、ライチと同じ科に属する果物のアキーを、熟する前に食べたあとに急性脳症を発症した事例があることに触れているそうだ。
 なぜこのニュースを引用したのかというと、ローレンス・G・ブロックマンの“Diagnosis: Homicide”収録の‘Rum for Dinner’(邦訳「ディナーにラム酒を」。『ディナーで殺人を 下』創元文庫所収)が、このアキー中毒を扱ったものだからだ。この作品でも、アキーは未熟か過熟だと有毒になるとされていて、ジャマイカで子どもがアキーを拾って食べて具合が悪くなったという事例に触れている。実際、ジャマイカや西アフリカでは、アキーが原因による死亡事故が過去にも起きているらしく、「ジャマイカ嘔吐症」と呼ばれているそうだ。
 同短編集に序文を寄せた、ニューヨーク市の首席検死官トマス・A・ゴンザレスは、このアキー中毒にも触れていて、毒殺の手法として真実味があるが、過去に確認された事例はおそらくないと述べている。
 もちろん、インドでの事例は、毒殺事件ではなく、事故と思われるし、原因もまだはっきり特定されたわけではないが、一定地域の特殊な果物だから身近に聞くことはあるまいなどと思っていると、時にはこんなことが起きたりするから、不思議な気持ちになるというものだ。
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ジャンル : 小説・文学

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