登場人物たちの名前

 10年以上前にニフティの投稿にも書いたことがあるが、キングの小説に登場する心理学者達の名前には隠された意味がある。『海のオベリスト』でいえば、Dr. John B. Hayvier(米版:Dr. Frank B. Hayvier)は‘behavior’(行動)、Dr. Rudolf Plechs(Dr. Malcolm Plechs)は‘complex’(コンプレックス)、Prof. Knott Mittle(Prof. Knott Coe Mittle)は‘middle’(中庸)、Dr. L. Rees Ponsは‘response’(応答)という具合にだ。
 その後参照した、米版に基づく『海のオベリスト』の邦訳解説では、ミトル教授の名前は‘non-committal’(言質を与えない)に由来するとしているが、そうかもしれない。とはいえ、ミトル教授が推理を展開する章の標題は、Middle grounding(中庸の根拠づけ)となっているし、英版の名前では必ずしもピンとこないので、どちらか確信は持てない。
 かつての投稿では心理学者の名前にしか触れなかったが、実は、他の登場人物達も意味深な名前を持っている。Coralieは‘corollary’(推論)、John I. Gnosensは‘gnosis’(認識)、Bering Y. Standerは‘bystander’(傍観者)という具合だ。ロード警部補の偽名Younghusbandも「若い夫」という意味だが、独身のロードがこんな偽名を名乗っていたのは、一種の自己韜晦なのだろうか。
 『鉄路のオベリスト』は翻訳しか持っていないので、原語のスペルがよく分からないが、メイボン・ラケット博士、アイヴァ・ポパス博士、ゴットリープ・イルトゥーム教授という名も、それぞれ意味があるように思える。おそらく‘racket’(騒ぎ)、‘purpose’(目的)、‘Irrtum’(ドイツ語で「誤り」)に由来するのではないだろうか。
その後の作品では、“Careless Corpse”の登場人物の名前も、なんとなく実在の人物を連想させるものがある。エリック・スターンというのは、バイオリニストのアイザック・スターン、アレーム・ゴムスキーというのは、言語学者のノーム・チョムスキーを連想させるのだが、いずれも当時存命中の人達だと思うし、さて、ただの偶然なのだろうか。
この作品はクラシック音楽をモチーフにしているので、章題を楽章構成にするという趣向が凝らされている。副題の‘Thanatophony’という言葉は、‘Thanatology’(死亡学)と‘Symphony’(交響曲)を組み合わせた造語と思われるが、仮に訳すとすれば、「交響死」、「響死曲」とでもするか。「作品番号4」(Opus Four, Number Four)と書かれているのもご愛嬌だ。
スポンサーサイト

テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

S・フチガミ

Author:S・フチガミ
お問い合わせ等は
fuhchin6491
(アットマーク)
hotmail.co.jp
へどうぞ

カテゴリ
フリーエリア
天気予報
リンク
検索フォーム
アクセスカウンター
RSSリンクの表示