“The S.S. Van Dine Detective Library”の選定経緯

 ヴァン・ダインの‘The Clyde Mystery’を紹介した機会に、以前紹介したヴァン・ダインによる長編ベスト7について、もう少し詳しく解説しておきたい。
 これは、1928年に、チャールズ・スクリブナーズ・サンズ社が、娯楽性と権威の点でベストの推理小説のコレクションを出版するために、当時、批評家としても作家としても権威と認められていたヴァン・ダインに、「スリリングでドラマチックな娯楽性」と「探偵小説の発展における重要性」という観点から、ベストの6冊を選んでくれるよう依頼したものである。
 ヴァン・ダインは、熟慮の末に、ドイルの『四つの署名』、ザングウィルの『ビッグ・ボウの殺人』、フリーマンの『オシリスの眼』、メイスンの『矢の家』、ルルーの『黄色い部屋の謎』、マクドナルドの『鑢』、クロフツの『樽』を推薦した(最初の2作は一巻に収録できるだろうということで7作選んでいる)。その回答は、同シリーズの巻頭に、出版社のノートに続けて掲載されている。

Van Dine Library1


 このシリーズでもう一つ興味深いのは、それぞれの巻に口絵が掲載されていること。ここでは、『黄色い部屋の謎』と『オシリスの眼』の口絵を紹介しておく。

黄色い部屋の謎
Van Dine Library2


オシリスの眼
Van Dine Library3


 ヴァン・ダインの人気は、『ファイロ・ヴァンスの犯罪事件簿』(論創社)の訳者解説などでも論じられているが、英米と日本とでは相当な隔たりがある。とはいうものの、以前紹介したように、英ミステリ界の重鎮だったジュリアン・シモンズが、コリンズ社のクライム・クラブの復刊を手掛けた1980年の時点で、謎解き探偵小説がピークに達した黄金時代の代表作として、クイーンの『フランス白粉の謎』、『ギリシア棺の謎』、『エジプト十字架の謎』と並んで、ヴァン・ダインの『グリーン家殺人事件』と『僧正殺人事件』を挙げていたことも改めて指摘しておきたい。実際、シモンズは、“Bloody Murder”(最終改訂1992年)においても、一方ではヴァン・ダインの凋落ぶりを容赦なく指摘しつつも、この二作については、「黄金時代の最良の成果」として称賛を惜しんでいない。ジョン・ラフリーの伝記も邦訳が出て、その毀誉褒貶ぶりが改めてクローズアップされたヴァン・ダインだが、一般読者の認知度はともかく、識者の中には、時代を経ても価値の変わらない作品の質の高さを評価していた者もいたことは触れておくべきだろう。
スポンサーサイト

テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

懐かしいです

ヴァン・ダイン、懐かしいですね。
と言っても、グリーン家と僧正しか読んだことはありませんが。
カナリアは途中まで読んで本がどこかへ行ってしまった…
クイーンの国名シリーズとともに中学の頃読みふけりました。
国名シリーズの「読者への挑戦」も良かったのですが
グリーン家の方が、真相を明かす手前で
探偵のヴァンスがすべての手がかりを全部列記してくれるので
よりフェアな感じがしたのを記憶しています。
また読み返したいですね。

私もです

私も読んだのは中学の時です。
クイーンやクロフツは数が多かったので、
手っ取り早く読破できそうなヴァン・ダインを
先に読んだ記憶があります(笑)
『グリーン家』は私も読み返したい一冊です。
プロフィール

S・フチガミ

Author:S・フチガミ
お問い合わせ等は
fuhchin6491
(アットマーク)
hotmail.co.jp
へどうぞ

カテゴリ
フリーエリア
天気予報
リンク
検索フォーム
アクセスカウンター
RSSリンクの表示