ローレンス・G・ブロックマン ‘Dr. Coffee and the Amateur Angel’

 ‘Dr. Coffee and the Amateur Angel’は、本国版EQMM1971年10月号に掲載されたコーヒー博士物の中編。
 なお、この号は、ジョン・L・ブリーンのエド・ゴーゴン物の第一作「ダイヤモンド・ディック」、エドワード・ホックの「レオポルド警部の密室」、ローレンス・トリートのミッチ・テイラー物の‘R as in Rookie’の初出誌でもある。

 匿名の電話を受けて警察がノースバンクの病院に急行すると、ヴァージニア・ヴォートという女性の整形外科医が、5階にある自分の診察室で殺害されていた。死因は絞殺だった。殺人課のマックス・リッター警部補は、すぐさまコーヒー博士に検死を依頼する。
 犯行時は既に診療時間外だったことから、受付係もいなかったが、エレベーター・ボーイの証言から、ヴォート医師の階に降りた最後の人物が、ブッカー・T・ワシントン・ジョーンズという、かつてのノースバンク大学のフットボール選手だと分かる。しかも、ジョーンズは帰るところを目撃されておらず、容疑者として逮捕される。
 ジョーンズは、大学卒業後、ベトナムで従軍したが、足に重傷を負い、ヴォート医師に治療してもらったことがあった。しかし、鎮痛剤として用いたモルヒネの後遺症で麻薬中毒となり、ノースバンクに戻ったあとも事件を起こしていた。ヴォート医師は、新聞でジョーンズの事件を知り、彼が麻薬中毒になった責任を感じて身元保証人となり、執行猶予となったジョーンズの治療に当たっていたのだった。
 ヴォート医師は、コーヒー博士にとっても、パストゥール病院で面倒を見た同僚医師であり、いつもと違って、心穏やかに検死解剖に臨むことができなかった。死因は明らかに絞殺だったが、コーヒー博士は、死体の手の爪から、犯行時に抵抗して相手の体を引っ掻いた付着物を採取する・・・。

 ヴォート医師が離婚を繰り返していて、元夫が複数容疑者として浮上するなど、中編のボリュームに応じて、やや複雑な面はあるが、根幹となるプロットはいつものようにシンプルにまとまっている。ただ、血液検査から犯人を特定するプロセスはなかなか興味深いのだが、その法医学上の知識は今でも決して時代遅れではないとしても、現在であれば、DNA検査でもっと確実に容疑者を絞り込んでしまうだろうな、と誰しも思うところだろう。
 法医学の目覚ましい進歩は、こうした知識をプロットに活用した作品をあっという間に時代遅れにしてしまう面があり、法医学をベースにしたミステリとしては先輩に当たるオースティン・フリーマンの‘The Pathologist to the Rescue’も、同じく血液検査をプロットに用いた作品だったが、今読めば、あまりに古色蒼然とした時代性を感じてしまう。(今をときめくパトリシア・コーンウェルのケイ・スカーペッタのシリーズにしたところで、50年後には、さて、どう評価されているだろうか。)
 1970年代に書かれた本作ですら、既に時代的な制約を感じさせるのだが、それを欠点として消極評価するより、そうした時代の作品であることを了解しつつ、謎解きを堪能するほうがよほど楽しいというものだろう。フリーマンの作品もそうだが、前提となる血液の特性は、今でも決して常識として知られているものではないし、こうした知識をうまくプロットに取り入れた作者の工夫を素直に評価したいところだ。


EQMM71-10
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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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