ジョゼフ・カミングズ ‘Murder of a Mermaid’

 ‘Murder of a Mermaid’は、Mike Shayne Mystery Magazine誌1982年8月号に掲載されたバナー上院議員物の短編。

 エイミー・ウェイヴァリーという水泳大会の優勝者が自宅の飛び込みプールで溺死体となって発見される。発見者はバナー上院議員で、彼女の平泳ぎが見たくて、シンシン刑務所の友人を訪ねたあと、ニューヨークに帰る途中で彼女の邸宅に立ち寄ったのだった。
 バナーは、リー・アンバーという、彼女のマネージャーを務める青年から、エイミーと婚約していたが、最近、彼女から婚約解消を告げられていたことを知る。バナーはそこから、自殺の可能性を示唆するが、リーは彼女が自殺するような人ではないと否定する。
 検死解剖の結果、エイミーの心臓や内臓に異常はなく、毒物も検出されなかった。彼女の指はすべて爪がはがれ、指先が擦りむけていて、溺れる前になにかと争ったらしい痕跡があったが、体にはなんの傷も残っていなかった。
 しかし、リーは、誰も泳ぎで彼女に勝てる者はなく、彼女が一流のライフセーバーだったことから、暴力の痕跡を残さずに彼女を溺れさせることができる人間はいないはずだという・・・。

 泳ぎの達人を暴力によらずにプールで溺死させるという、魅力的な不可能犯罪の設定だが、トリックのアイデア自体はシンプルで、手の込んだ仕掛けを用いていないこともあって印象は悪くない。ただ、その分、ちょっと考えれば見抜けそうなトリックであり、もう少しミスディレクションを加味するなどの工夫があってもよかったかもしれないと思わせる。
 フーダニットと動機の謎にも、シンプルながら伏線をうまく張ってあって、まとまりのよい佳品ではあるが、作品の短さもあって、プロットの骨格だけでできているようなところがあり、うまく肉付けすれば、もっと魅力的な作品になったのではないかと思わせるところがちょっと惜しい。‘The Black Friar Murders’のように、そうした肉付けで雰囲気や謎の神秘性を巧みに醸成する才も、作者にはそれなりにあったと思うからだ。


Mike Shayne82-8
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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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