ジョゼフ・カミングズ ‘The Glass Gravestone’

 ‘The Glass Gravestone’は、The Saint Mystery Magazineの1966年10月号に掲載されたバナー上院議員物の中編。

 ストーリーは、ボブ・ファラガットというAP通信の記者の一人称で進行する。
 ファラガットは、夜九時の既に閉館した国連事務局で、安保理議長のサー・クィラー・セルウィンを取材しようとしていた。エスカレーターの下に行くと、スレンドラナト・ダスというインドの国連代表も来合わせていた。ダスはサー・クィラーに呼び出されたとのことだった。
 サー・クィラーは、エスカレーターに乗って降りてくると、二人の存在に気づき、マスコミの記者といるダスに、気をつけるよう警告を発するが、その言葉が終わらないうちに、銃声のような鋭い音がし、二人がエスカレーターを見上げると、サー・クィラーはのどを切られ、傷口から血を噴き出し、前のめりに倒れて二人のところに転がり落ちてきた。
 その時、サー・クィラーは半分くらいまで降りてきていて、二人から二十フィートほど離れたところにいたはずだったが、彼のうしろにも周囲にも誰もいなかった。ファラガットが死体を確認し、そのそばに旧式の剃刀を見つける。
 ファラガットは緊急停止ボタンを押してエスカレーターを止め、上階にあがるが、そこには、サー・クィラーの秘書のバーニス・ハーパーと国連事務局職員のジャック・クロイドンがいるだけで、ハーパー秘書はオフィスにいたし、クロイドンはベトナム戦争で片足を失って義足をしており、どちらも現場に近づいた様子はなかった・・・。

 ニューヨークの国連事務局で起きる殺人を描いているが、閉館後の事件のため、さほどの大騒ぎにもならず、なんのためにそんな特殊な舞台設定をしたのか必然性に乏しく、雰囲気づくりにも、ミスディレクションにもさほど寄与していない。肝心のトリックも、例によって不可能状況の設定は魅力的なのだが、解決の仕方はやはり釈然とせず、尻すぼみな印象を受けてしまう。
 もっとも、ロバート・エイディは、“Locked Room Murders and Other Impossible Crimes”において、「カミングズらしい巧みな処理と見事な雰囲気」と本作を称賛しており、不可能犯罪物に対して点が辛くなりがちな私自身の見方が厳しすぎるのかもしれない。カーやホックのファンならば共感する向きも多いのではなかろうか。
 なお、この号には、ウールリッチの「マネキンさん今晩は」が再録されている。ウールリッチの短編の中でも印象に残る作品の一つだ。


SaintMag66-10
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