ローレンス・G・ブロックマン ‘Missing: One Stage-Struck Hippie’

 ‘Missing: One Stage-Struck Hippie’は、エラリー・クイーンのアンソロジー“Aces of Mystery”(1975)に収録された、ダニエル・ウェブスター・コーヒー博士物の中編。初出は本国版EQMM1970年9月号である。

 タイベリアス・ブラウンという男が、マックス・リッター警部補を訪ねてきて、行方不明のフィアンセを探してほしいと依頼する。ブラウンは、カリフォルニアの大学で演劇を教える講師で、フィアンセのフィリス・エマースンは、彼の学生であり、役者でもあった。彼女は、ドン・サザーランドという夏季芝居公演の監督から端役をもらったため、6週間前にノースバンクに行ったが、1日おきに手紙を書くと約束したのに、十日ほど前からぷっつりと音信不通になり、電話にも出ないという。
 殺人課の案件とは思えなかったが、リッター警部補は不安になり、サザーランドにも当たり、彼女が偽名でホテルに泊まっていたことを突き止める。サザーランドによれば、彼女はリハーサルの途中で吐き気を催して役から降りてしまい、その後劇場にも来なくなったという。
 彼女が泊っていたホテルを調べると、部屋は彼女が滞在していた時のままで、警部補は、電話帳の表紙に二人の医師の名が記されているのを発見する。コーヒー博士に彼らのことを尋ねると、二人とも人工中絶を行った経験のある医師で、彼女が中絶の相談をしたのではないかと示唆する。
 リッターがブラウンから得たフィリスの写真を新聞に掲載して情報提供を求めると、サイモン・ガリックという左翼活動家が農家を改造した「ラヴ・ファーム」というヒッピーたちの溜まり場に彼女が行くところを目撃したという証言が寄せられる。ガリックの妻ゾーナは富豪の娘だったが、父への反発からガリックと結婚したのだった。夫妻はいずれも、フィリスのことを知らないと言い張るが、リッター警部補は、帰り際に、ブラウンの服に付いていたと思しきアクリル樹脂製のボタンが落ちているのを見つける。
 警部補は、コーヒー博士からの連絡で、フィリスがパストゥール病院に担ぎ込まれたことを知る。彼女は、サザーランドの劇場のステージに昏睡状態で倒れているところを発見されたという。嘔吐していたため、サザーランドは彼女が泥酔していると思ったが、吐瀉物に血が混じっているのに気づき、救急車を呼んだのだった。
 彼女の症状はタリウム中毒で、意識も既になく、髪はすべて抜け落ちていた。彼女は間もなく死亡するが、妊娠二か月だったと判明する・・・。

 コーヒー博士は、いつもであれば、淡々と検査結果を明らかにする学者肌の人物なのだが、この作品では珍しく、リッター警部補に頼んで、容疑者たちを自分の研究室に一堂に集め、謎解きを披露してみせるだけでなく、容疑者に罠をかけて追い詰める。プロット自体はさほど斬新なものではないが、普段は地味な印象の強い博士が、名探偵のごとく大見得を切ってみせる場面がユニークで面白い。
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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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