ピーター・ゴドフリー ‘The EQMM Mystery’

 ‘The EQMM Mystery’は、本国版EQMMの1977年2月号に掲載された短編。ノン・シリーズ物であり、おなじみのロルフ・ル・ルーもジュベール警部補も登場しない。ストーリーは一人称で、語り手が読み手に向かって語りかける体裁で進行していく。

 語り手は、連続殺人事件の顛末を語る。最初の犠牲者は、ルーシー・スミスという、6歳のダウン症の女の子。家の裏庭で一人で遊んでいる時に行方不明になり、その三日後に、農夫がウサギ狩りをしていて死体を見つける。死体には、雑草、野草などがあたかも供花のようにかけられていた。農夫は現場に手を触れずに、最寄り警察のオットー・クーガン警部に連絡する。ルーシーは、細い革紐で絞殺されていて、死亡推定時刻は失踪直後と判明する。その三日後の朝、警察本部長宛てに、紫色の鉛筆でルーシー殺害を暗示する詩の引用が書かれた手紙が届く。
 事件の5週間後、今度は、グレイニー・パートリッジという、町はずれの掘立小屋に住む90歳を優に超えた老女が同じ手法で絞殺される。クーガン警部は、パニックが起きるのを恐れて公表を伏せるが、同じく紫の色鉛筆で書かれたグレイニー殺害を暗示する詩の引用が書かれた手紙が届く。
 その18日後に、またもや手紙が届くが、引用の詩に暗示された死体は未発見だった。詩を手がかりに、海か狩りに関係のある障害者の男の捜索を行うと、スキッパーというあだ名の、両腕に錨などの航海を象徴する刺青をしたアル中の乞食が行方不明と分かる。警察は、目撃者の証言から、小溝の中に両側の土手の土をかぶせられていたスキッパーの死体を発見する。
 さらに、その15日後、公園で ガナー・サーセンという8歳の男の子と、その双子の妹が、やはり同じ手法で殺害されて発見される。彼らは、スカンジナヴィアからの移民の子で、彼らだけでかくれんぼをして遊んでいるところを襲われたのだった。
 その3週間後、クーガン警部は語り手の許を訪れる。彼の妹のローズが、一週間行方不明になっていて、語り手が電話で病院に照会をしたという情報を得たからだ。警部は、ローズを暗示する詩が書かれた手紙を見せる。警部は、州立大学の心理学教授から語り手を紹介され、専門家としての意見を聞くようにも勧められていた。ローズは、流産を繰り返したことから結婚生活が破綻し、アルコール中毒になっていたという・・・。

 ロルフ・ル・ルー物の短編でも、作者は心理学を応用したプロットを得意としていたが、本作はその特徴が最も如実に表れた作品である。作中には、ジキルとハイドへの言及や、フロイトの著書の引用をはじめ、異常心理に関する知識や関心がちりばめられ、一歩間違えると古臭いトリックの焼き直しになりかねないところを、巧緻なストーリーテリングと心理学上の知識をうまく織り交ぜることで、綱渡り的なギミックを仕掛けることに成功している。
 ル・ルー物の短編では、心理学といっても、専門的な知識というより、もっと常識的な次元の心理分析を用いている例が多かったが、本作では、心理学への関心が叙述やプロットとうまく融合して効果を上げており、マクロイの有名作を連想させるほどだ。謎解きとは次元の違う作品だが、プロットの巧みさという点では、ゴドフリーの作品の中でもピカイチの出来栄えかもしれない。


EQMM1977-2
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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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