ジョン・ロード “In Face of the Verdict”

 “In Face of the Verdict”(1936)は、プリーストリー博士の登場する長編。

 オールドランド医師は、ブラックサンド在住のジョン・ハラトロウ卿から私立探偵を連れて検死審問を傍聴しに来てほしいとの手紙を受け取る。オールドランドは、プリーストリー博士とともに現地に赴き、ウォルター・ベッドワーシー中佐の検死審問を傍聴する。
 ベッドワーシー中佐は、数年前に事故で妻と息子を失い、自身も顔にひどい傷跡を残し、それ以後、中佐は人に顔を見られるのを嫌って日中は外出しなくなっていた。
 ある日、中佐は、港の入口で溺死体となって発見されるが、ベッドワーシー中佐は、その前日の夜、ジョン卿の邸を訪れ、11時過ぎに帰って行ったという。中佐はジョン卿の邸であるウェストマーシュ・マナーをよく訪れていたが、その邸とベッドワーシー中佐のレッドランズ邸の間には川があるため、中佐は自分用に川を渡る歩道橋を設置してあった。
 ジョン卿は検死審問で、歩道橋が霜の降りる季節には滑りやすいことを証言し、ベッドワーシー中佐が凍った橋で滑って、橋の手すりの下から川に転落した可能性を示唆する。死体には争った痕跡もなかったことから、川に転落して溺死した結果、死体の発見場所まで流されていったと考えられ、陪審員団は事故死という評決を下す。
 ところが、検死審問のあと、ジョン卿は、自殺の評決を出させないために、意図的に事故死の評決に導くよう証言したとオールドランドとプリーストリー博士に告白する。実際は、歩道橋が凍って滑りやすくなっていたという事実はなかったという。その晩は月明かりもない真っ暗闇だったが、ウェストマーシュ・マナーの塔に設置された時計の緑に光る蛍光表示を目印にして、迷うことなく歩道橋に行けるようになっていた。
 ベッドワーシー中佐の財産の大半は、政府の役人をしている弟のアーネスト・ベッドワーシーが相続することになっていた。アーネストには妻と娘のモリーがいたが、妻は不治の病に侵され、余命は幾ばくもなかった。モリーは、レナード・マッケイというエンジニアの夫がいて、ウィンブルドンに在住していたが、二人を結び合わせたのは、モリーが敬愛する叔父のアーネストだった。
 中佐の葬儀が終わったあと、ジョン卿はレッドランズに立ち寄り、アーネストから邸の売却を持ちかけられるが、アーネストはその後行方不明となってしまう。アーネストは、ジョン卿からの邸の処分の件で話がしたいという偽の手紙におびき出されたらしかった。その後、警察宛てにアーネストがジョン卿の邸近くの池に沈んでいると示唆する地図が送られてくる。池の水門を開いて水位を下げると、果たして、アーネストの死体が発見される。アーネストは頭を殴打されて殺害されていた。
 その数日後に、アーネストの妻も病死する。ベッドワーシー中佐の財産は弟のアーネストが相続し、さらに、その財産は妻が相続したため、最終的に娘のモリーが相続することになっていた。
 あまりに都合よく続いた死の連鎖に、モリーとその夫のレナード・マッケイが容疑者に浮上する。ところが、モリーは夫と結婚して最初の一、二年はうまく行っていたものの、その後、モリーが「テレパシー研究所」のメンバーになった頃から二人は不仲になり、顔を合わせることも少なくなっていた。マッケイによれば、モリーは離婚を検討していたし、マッケイ自身も敢えて逆らわない心づもりでいたという。マッケイの意見では、モリーが父親のアーネストを殺すことはあり得ても、敬愛する叔父のウォルターを殺すとは考えられないという・・・。

 ハンスリット警視とともにワグホーン警部も登場するが、ロードとしては比較的初期の作品であり、プリーストリー博士も積極的に外出して自ら捜査に携わるし、ストーリー展開にもそれなりに起伏があって、中期以降の作品にしばしば感じる退屈さはない。中期以降の作品では、博士の邸であるウェストボーン・テラスで、定例夕食会に出席するメンバーが延々と議論を続けるという定型パターンが多くなり、時として我慢ならぬほど退屈に感じることもあるが、そうした欠点が目立たないところは好印象だ。
 プロットも、ベッドワーシー中佐と弟のアーネスト殺害のトリックは比較的早い段階で明らかにされ、ロードにしては珍しく、ハウダニットに重きを置くのではなく、むしろ、二人を殺害した動機の謎を際立たせながら、フーダニットに興味の焦点を向けさせるようにしているところが面白い。
 もっとも、それほどの意外性があるわけでもなく、好意的に評価しても、まずまずまとまりのよいプロットと言える程度の作品ではないだろうか。これで個々の登場人物をもっと詳細に描くなり、人物造形を丁寧に行っていれば、そんなプロットでも効果を上げたのかもしれないが、残念ながら消化不良に終わっているのが惜しいところだ。
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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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