ジョン・ロード “The Lake House”

 “The Lake House”(1946)は、プリーストリー博士の登場する長編。ジミー・ワグホーンが、前作“The Bricklayer’s Arms”(1945)での功績も認められ、警視に昇進して最初に手掛けた事件である。ハンスリット警視は、“Vegetable Duck”(1944)で既に警察を退職していて、本作でもハムステッドで隠居生活を送る身として登場している。

 ある五月の夜、ライド巡査部長は、「メルコート・プラリオリー」という邸の主人、ジョージ・ポッターン氏に呼び出され、チノック巡査とともに、邸の離れである「レイク・ハウス」を訪れた。邸に仕える、採用されて間がない執事のゲドニーが、邸のウィスキーをこっそりくすねて人に売っているという噂があり、その件で訴える目的で呼び出されたものと思われた。邸の敷地内には人工池が設けられ、「レイク・ハウス」はその池に臨む小さな離れ屋だった。
 ポッターン氏は、切手を集めたり、昔ながらの錬金術に耽るのが趣味であり、「レイク・ハウス」に収集した切手や化学薬品などを置き、人に邪魔されずに一人でそこで過ごすことが多かった。
 ライドとチノックが「レイク・ハウス」に到着してドアをノックするが、反応がなく、ドアを開けて中を覗き込むと、ポッターン氏は窓を背にして、テーブルの前にうつぶせになって座ったままこと切れていた。
 ライドは、スコットランド・ヤードに支援を求め、派遣されたワグホーン警視を「レイク・ハウス」に案内する。ポッターン氏が坐っていた椅子の背の革装の上端に裂け目があることから、ワグホーン警視は、ポッターン氏が真後ろから撃たれたものと判断し、凶器も現場に残っていなかったことから、自殺の可能性はないと思われた。
 テーブルの上に置いてあった箱には、決闘用の銃が入っていたが、二丁対であるはずの銃が一つしかなく、ワグホーン警視は、池の中にもう一つの銃が沈んでいるのを見つけ、凶器と判断する。銃の入っていた箱の外側は脂ぎっていて、指紋がくっきりと残っていた。暖炉に残っていた灰の中に、遺言書の断片らしきものが見つかり、これにも同じ指紋が検出される。
 さらに、床には黒い足跡が点々と残り、犯人の残した足跡と考えられた。どうやら、ポッターン氏は、煙突から出た煤をポーチの外に捨てたらしく、犯人はその煤のかたまりを踏んでから「レイク・ハウス」に入ったため、気づかずに足跡を残してしまったようだった。
 ポッターン氏は二年ほど前に結婚したばかりだったが、シルヴィア・ポッターン夫人は健康上の理由で数週間前から海外に行っていて不在だった。ところが、邸の使用人も含め、誰もその所在を知らず、夫の死を知らせることもできなかった。
 ポッターン氏の代理人をしているネイスビー氏によると、ポッターン氏は結婚する数週間前に遺言書を作成していたが、つい先週、新たな遺言書を作成したばかりだったという。以前の遺言書では、財産の大半は夫人のシルヴィアに、夫人が亡くなって子どもがいた場合には、その子どもに遺されることとなっていたが、新たな遺言書では、夫人の名は消され、いとこのティチマーシュ夫人に財産の大半を遺すという内容に変わっていた。
 どうやら、ポッターン氏は、愛してもいないのに、子どもがほしいという目的だけのためにシルヴィアと結婚したらしく、シルヴィアは夫に我慢ができず、邸を飛び出して、愛人のエリック・バリスターのもとに奔ってしまったらしいと分かる。そして、「レイク・ハウス」に残されていた足跡と指紋は、バリスターのものであることが判明する・・・。

 代表作との評判が高い『ハーレー街の死』と同年に発表された作品だが、質は著しく劣ると言わざるを得ない。プロットもほとんど見え見えで、意外性もなければ、独創性もない。ロードらしい技術的な仕掛けが、やはり使い古されたトリックとしか思えず、いまどきこんなトリックに感心する読者はほとんどいないだろう。
 海外の書評などを見ると、法廷場面に見どころがあるような意見もあるが、これも、ペリー・メイスン物や『殺意』、『ユダの窓』などの評判の高い法廷場面とは比べ物にならず、起伏のない退屈な描写としか思えなかった。
 これはあくまで私見だが、ロードの傑作は30年代に集中していて、40年代に入ると、注目すべき作品も幾つかあるものの、急激に質が低下するように思える。ウェストボーン・テラスでの例会が定番となり、中間部分で退屈な尋問と議論の場面が延々と続くパターンが固定化してくるのもこの頃からだ。
 本作でも、プリーストリー博士は、ほとんどウェストボーン・テラスで意見を述べるだけで、最後のほうで事件現場に自ら赴いて検証を行いはするが、それも確認のために赴くだけ。しかも、半分近くなるまで登場せず、その登場場面すら限られている。下り坂に入った時期の弱さが露呈しているようで、読んでいて辛いものがあった。
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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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