ジョン・L・ブリーンが選ぶ推理小説ベスト

 ジョン・L・ブリーンといえば、作家としての業績もさることながら、ジョン・ディクスン・カーの衣鉢を継いでEQMMの「陪審席」を担当する書評家としてつとに名高い。そのブリーンがミステリの長い歴史を俯瞰して、どんな作品をベストに推しているのかは興味津々といえるだろう。
 ポピュラーなリファレンス・ブック等には、ブリーンの選ぶベストは意外と出てこないし、ケイト・スタイン編“Book of List”(第二版:1995)でベストテンを寄せている著名な作家、批評家等の中にもブリーンの名はない(但し、リファレンス・ブックのベスト20は同書に別に載せている)。意外に知られていないと思うので、ブリーンによる代表的なベスト表を拾い上げてみたい。
 
 まずは、ブリーン選の“Twenty-Five Great Amateur Detective Novels”。マックス・アラン・コリンズ編“The History of Mystery”(2001)に載せたもの。順序は作家名のアルファベット順。

 マージェリー・アリンガム   『幽霊の死』
 E・C・ベントリー      『トレント最後の事件』
 アントニイ・バークリー    『毒入りチョコレート事件』
 ニコラス・ブレイク      『野獣死すべし』
 アンソニー・バウチャー(H・H・ホームズ) “Rocket to the Morgue”
 サイモン・ブレット      “So Much Blood”
 ジョン・ディクスン・カー   『曲がった蝶番』
 アガサ・クリスティ      『ABC殺人事件』
 クライド・B・クレイスン   『チベットから来た男』
 エドマンド・クリスピン    『お楽しみの埋葬』
 ハリー・ケメルマン      『金曜日ラビは寝坊した』
 エマ・レイサン        『死の会計』
 フランシス&リチャード・ロックリッジ  “The Norths Meet Murder”
 スチュアート・パーマー    『ペンギンは知っていた』
 エリザベス・ピーターズ    『砂洲にひそむワニ』
 エリス・ピーターズ      『聖女の遺骨求む』
 エラリー・クイーン      『九尾の猫』
 パトリック・クェンティン   『迷走パズル』
 クレイトン・ロースン     『首のない女』
 ケイト・ロス         『マルヴェッツィ館の殺人』
 ドロシー・L・セイヤーズ   『ナイン・テイラーズ』
 フィービー・アトウッド・テイラー  “Banbury Bog”
 S・S・ヴァン・ダイン    『カナリヤ殺人事件』
 メアリ・ウィリス・ウォーカー 『処刑前夜』
 ジェームズ・ヤッフェ     『ママ、手紙を書く』

 ブリーンは、以前紹介した“Mystery Muses”(2006)でも、「アメリカン・クラシック」の作家として、クイーンやカーなどと並んで、クライド・B・クレイスンやスチュアート・パーマーの名を挙げていたが、このあたりはブリーンの個性が表れたところか。最近、新訳の出たクェンティンの『迷走パズル』も選ばれている。過去の作家扱いをされがちなフィービー・アトウッド・テイラーやヴァン・ダインも、忘れずにしっかり選んでいるところも面白い。

 以上はオールタイムで選んだものだが、最近の本格物として、“Fifteen Contemporary Traditional Mystery Novels”も選んでいる。これはエド・ゴーマン、マーティン・H・グリーンバーグ、ラリー・セグリフとともに編纂した“The Fine Art of Murder”(1993)に載せたもの(当時存命中の作家で、最近20年以内に出版された作品)。

 バーバラ・ダマト      “Hard Tack”
 ウィリアム・デアンドリア  『ウルフ連続殺人』
 コリン・デクスター     『オックスフォード運河の殺人』
 ピーター・ディキンスン   “One Foot in the Grave”
 スーザン・ダンラップ    “A Dinner to Die For”
 アーロン・エルキンズ    『古い骨』
 ジェーン・ハッダム     “Precious Blood”
 P・D・ジェイムズ     『黒い塔』
 ゲイロード・ラーセン    “Atascadero Island”
 フランシス・M・ネヴィンズ・ジュニア  “Corrupt and Ensnare”
 エリザベス・ピーターズ   『リチャード三世「殺人」事件』
 ハーバート・レズニコウ   “The Hot Place”
 ジョン・スラデック     『黒い霊気』
 スコット・トゥロー     『推定無罪』
 ジェームズ・ヤッフェ    『ママのクリスマス』

 エリザベス・ピーターズやジェームズ・ヤッフェについては、オールタイムのベスト表とは違う作品を選んでいるところも面白い。
 ブリーンはさらに、同じ書において、ハードボイルド分野のベスト“Twenty-Five Private Eye Novels”や、アンソロジーのベスト、80年以降の短編ベストなど、いろんなベスト表を載せていて、なかなか興味深い。
 ちなみに、ハードボイルドの分野では、ハメットの『マルタの鷹』、チャンドラーの『さよなら、愛しい人』、ロス・マクドナルドの『ブラック・マネー』、スー・グラフトンの『無実のI』、ロバート・B・パーカーの『誘拐』などを選んでいる。

 日本の雑誌『BRUTUS』の97年11月1日号には、オットー・ペンズラーの選ぶベストテンが載っていたりなどして、意外なところに著名な批評家のベスト表が隠れていたりするものだが、フレドリック・ブラウンの『不思議な国の殺人』など、ユニークな選択が見られて、これもなかなか面白いところだ。
スポンサーサイト

テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

S・フチガミ

Author:S・フチガミ
お問い合わせ等は
fuhchin6491
(アットマーク)
hotmail.co.jp
へどうぞ

カテゴリ
フリーエリア
天気予報
リンク
検索フォーム
アクセスカウンター
RSSリンクの表示