ジョン・ロード “Death on the Board”

 “Death on the Board”(1937)は、プリーストリー博士が登場する長編。

 アンドリュー・ウィギンホール卿が、自宅のプリヴェット荘で爆死する。アンドリュー卿は、家庭用品から農機具に至るまであらゆる種類の金物類を扱うポースリン株式会社の会長だった。
 ポースリン社は、元はアンドリューの父親の代に始めた小さな金物屋だったが、その子供たちの代に英国の各地に支店を構える大会社に発展させたものであり、ウィギンホール家が経営する会社といってよかった。
 ポースリン社には、五人の重役がいた。実質的な発言権は、アンドリューのほか、アンドリューの弟、パーシヴァル・ウィギンホールと、義弟のジェイムズ・フロットマン大佐が握っていた。フロットマン大佐は、アンドリューの妹、キャロラインの夫であり、妻の利益を代表する立場で重役に加わっていた。残りの二人は、主要バイヤーのサミュエル・グリムショウと、支店長の一人、バーナード・タンステッドだったが、二人は名誉職的な立場であり、実質的な発言権はほとんどなかった。
 アンドリュー卿は、冬の休暇で地中海へのクルーズに出かけ、息子のアントニーに港に出迎えてもらって自宅に帰ってきたところだった。爆発は脱衣室か浴室で起きたガス爆発と思われ、事故死として処理された。
 アンドリュー卿には、息子のアントニーと娘のドロシー・パストンがいた。アンドリューの逝去を受けて、フロットマン大佐が重役会で後任の会長に選ばれ、アントニーが欠員となった重役の一人に補充される。
 その翌月、五十歳の誕生日を迎えたタンステッドは、レストランで誕生パーティーを祝うが、そのあと、エスコリアルという、いつも泊まるホテルに行く。そこで夜勤のポーターから、シリングストーンという老紳士が訪れたことを聞き、不審に思う。タンステッドは、かつてネトルステッドという土地で支店長を務めていたが、その土地には、同じ金物商のシリングストーンという商売敵がいた。タンステッドは、上司の指示に従ってシリングストーンを蹴落とすことに成功するが、シリングストーンは妻と幼い子を残して自殺するという悲劇的な事件があったのだった。
 タンステッドには、寝たばこの習慣があり、しばしばシーツを焦がしていたが、そのたびに気前よく弁償して、その習慣を改めようとしなかった。タンステッドは、その晩、ベッドの中で、寝たばこが原因で焼死する。毛布はほとんど燃えていないのに、シーツとパジャマが焼失して、全身やけどを負うという不審な死に方だったが、検死審問では事故死との評決が下る。タンステッドの後任には、ピットコームの支店で優れた業績を上げたヒュー・クリフォードという支店長が三十二歳の若さで重役に抜擢される。
 その九か月後、今度は、パーシヴァルが、自分のオフィスで昇汞を服用して死んでいるのが発見される。いつも服用していた胃腸薬は手つかずだったことから、仕事の悩みからの自殺と考えられた。ところが、秘書の話から、その直前に、シリングストーンという人物がパーシヴァル宛てに電話をかけてきたことが分かる・・・。

 脂の乗った時期に書かれた作品らしく、五人の重役が次々と不審な死を遂げていくというストーリー展開は、それなりに読ませるものがあり、定型パターンに陥りがちな中期以降の作品にしばしば感じられる退屈さは希薄なため、印象はそんなに悪くない。設定や展開は、同じく連続殺人を扱った初期の代表作『プレード街の殺人』と似ているが、一つ一つの殺人に、いかにもロードらしいハウダニットの手法を惜しげもなく取り入れているところがなかなか贅沢だ。
 ただ、いったん、重役がターゲットだと分かると、次の展開が予測できてしまうし、ストーリーテリングの拙さもあってか、謎の殺人者がいま一つ不気味さに欠け、サスペンスが薄味になっているところが弱い。犯人と動機についても、ありきたりな設定に終わっているし、手がかりが自明過ぎて、すぐ犯人の見当がついてしまうなど、謎解きとしても見どころに乏しいのが残念なところだ。
 コテコテの謎解きファンには物足りない作品かもしれないが、初期作品らしい起伏のあるストーリー展開を楽しめるという点では、ロードの長編の中でも、読んで損のない作品と言えるかもしれない。
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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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