フリーマンの献辞入り本

 オースティン・フリーマンの著者署名入り本を四冊所持しているので、それぞれご紹介する。

 まずは、英チャトー&ウィンダス社の“John Thorndyke’s Cases”(1909年)。アリス・ビショップ宛ての献辞が書かれている。
 ノーマン・ドナルドスンの“In Search of Dr. Thorndyke”によれば、フリーマンはビショップ家の家庭教師をしていたとのことであり、また、“The Other Eye of Osiris”の解説によれば、アリスとは愛人関係にあったとの疑いもあるようだ。


ジョン・ソーンダイクの事件



 次は冒険小説“The Golden Pool”のホダー&スタウトン社から出た第二版(1926年)。カーテレット・ビショップ宛ての献辞があり、フリーマンが家庭教師をしていたビショップ家の子どもの一人。
長年にわたって家族ぐるみで親しくしていたことがうかがえる。


ゴールデン・プール



 極めつけは、次の、“The Penrose Mystery”(邦訳『ペンローズ失踪事件』長崎書店)。この本は実はタダモノではない。
 初版ではなく、第三版なのだが、登場人物のエルムハースト氏のモデルとなった考古学者ロナルド・ジェサップ宛の献辞入りである。この献辞の中でも、フリーマンはジェッサップをエルムハースト氏と呼んでいる。なお、エルムハースト氏は『ペンローズ失踪事件』のほかに『ジェイコブ街の謎』にも登場する考古学者である。
 しかも、これは、ノーマン・ドナルドスンの“In Search of Dr. Thorndyke”にその写真が掲載されている実物なのだ。掲載写真の解説では、ジェサップ氏の好意で掲載した旨の注記がある。


ペンローズ


ソーンダイクを探して



 ドナルドスンの記述によれば、第二次大戦の空襲で献呈初版本を焼失してしまったジェサップに改めて献呈したものらしい。初版ではなく第三版なのも、そんな背景から理解出来る。
 何の因果か、私の手元に来ることになったが、多少経緯を記せば、これはドイツの古書店から購入したもの。回り回ってどうやってドイツにこの本が渡ったのかはよく分からない。
 自身のカリカチュアまで書き添えているのが面白い。


 次は、“Felo De Se?”(1937年)の英初版に記入されたドロシー・ジェサップ宛の献辞。ドロシーは多分、ロナルドの妻ではないかと思う。こちらは『ペンローズ』と違って、初版献呈本が焼失せずに残ったことになる。


自殺者か



 次は番外編で、ノーマン・ドナルドスンがロナルド・ジェサップに献呈した“In Search of Dr. Thorndyke”。
ジェサップはその本をさらにシリル・シャトルワースなる人物に献呈していて、ドナルドスンの献辞の下に自らの献辞を書き添えている。
 「ミスター・エルムハースト(またの名をロナルド・ジェサップ)」と称して献辞を書いているのが面白い。
30年経っても、ジェサップはフリーマンとの交流の思い出を大切に抱き、それを献辞に表したのだろう。


ジェサップ
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