「魔法の小函」

 ソーンダイク博士が登場する最後の短編集“The Magic Casket (1927) ”の標題作は、日本人にとっては興味深い作品。
 「マジック・ミラー」なるものがプロットの要として出てくるのだが、これは我々が通常理解しているマジック・ミラーのことではなく、日本語で「魔鏡」と呼ばれるもので、反射光の中に像ができる鏡のことである。
 調べてみると、これは江戸時代に誕生した日本独特の技術だそうで、鏡面の裏面の浮かび上がらせたい像にあたるところに梁のような凸部を作り、鏡面を磨くと、梁のないところが少したわんで、梁にあたるところが凹面となり、鏡の表面には何も映っていないのに、光を当てると像が浮かぶようになる仕組みとのこと。
 禁教下の江戸時代後期によく作られ、キリスト像などを投影して信仰を支えた「隠れ切支丹鏡」としても知られているそうだ。現在では、その技法を受け継いで魔鏡を製作している職人はごく僅かとなり、熟練の技術を要するため、一般には製作不可能な秘伝となっているとのこと。
 それにしても、この「魔鏡」、私もこの作品に触れるまで知らなかったが、どれだけの日本人が知っているだろうか。フリーマンの該博さに驚かされる。
 この短編には、「Uyenishi(上西)」という日本人名や「shakudo(赤銅)」という金属名も出てくるなど、まさに日本を題材にした作品となっている。
 これも、ピアスン誌掲載の際には標題の「魔法の小函」の写真が載っていたが、単行本では欠落している。どこで入手したものか知らないが、実に愛嬌のある小函だ。


魔法の小函
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