ジョゼフ・カミングズ “The Moving Finger”

 “The Moving Finger”は、Mike Shayne Mystery Magazineの1968年4月号に掲載されたバナー上院議員物のショート・ショート。

 バナーは、ベトナム戦争の現場を視察したあと、帰国途中にイラクに立ち寄り、油田所有者の族長、アリ・サアブの招待を受ける。
 族長は、6か月前にアメリカ人女性のバーニスと結婚したばかりだった。バーニスも交えた食事のあと、彼女が先に席を立つと、族長はバナーに、妻が不倫をしていると打ち明ける。族長の話によると、妻に仕えるアヌークという召使いの老女から聞き出したという。
 不倫の相手は、族長の経営する石油会社で仕事をしている3人の男のうちの誰かだが、特定できない。3人とも族長の居所から近い管理棟で仕事と生活をしていたが、バーニスと相手の男とはひそかにメッセージのやりとりをして逢引をしているようだった。ところが、二人がどうやってメッセージを残しているのかが分からない。
 バーニスを監視していたアヌークの話では、彼女は彼らが不在の間にそれぞれのオフィスに数分だけ立ち寄るという。しかし、ハンドバッグのほかには何も持っていないし、オフィスから何かを持ち出す様子もない。日中、彼女に接する男はいないし、手紙も電話連絡も来ることはないという。
 族長は、バーニスが立ち寄る前に、それぞれのオフィスを調べるが、机椅子、電話、タイプライター、キャビネットを見ても、それらしいものはないし、壁や天井、床にも何も書かれていなかったという。ただ、アヌークがバーニスのハンドバックの中を調べてみると、チョークが入っていたという。
 族長はバナーに、相手の男をイラクから追放し、妻の愛情を取り戻したいので、真相を突き止めてほしいと依頼する・・・。

 肥満体のわりには、世界各国を精力的に飛び回るバナー上院議員だが、本編では、イラクという特殊環境が謎の設定にも一役買っている。ショート・ショートの分量ということもあり、謎自体も小粒だが、変にひねったものではなく、シンプルで分かりやすいため、軽い読み物としては楽しめる。ミニ・ミステリとして捉えれば悪くない作品だろう。


Mike Shayne68-4
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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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No title

この作家さんの短編集も出してほしいですよねー。翻訳権が取れないのかしら? 密室もののアンソロジーで何編か読んだことがありますよ。

クリッペン&ランドリュから、“Banner Deadlines”
という短編集が出ているので、過去にも、同社の本は
翻訳が出てますから、どっかの出版社がその気になれば
出せると思うんですけどね。
このブログでご紹介しているのは、その単行本にも
収録されていない、雑誌掲載のまま放置されてる
ものばかりです(アンソロジー収録物はあるけれど)。
「Xストリートの殺人」みたいな傑作も、邦訳は
雑誌掲載のまま放置されているので、もったいないですね。
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