サイン入り『ペンローズ失踪事件』の謎

 以前の記事で、フリーマンのサイン入り『ペンローズ失踪事件』のことをご紹介した。
http://fuhchin.blog27.fc2.com/blog-entry-20.html
 同書に登場する考古学者エルムハースト氏は、献辞に名の出てくるフリーマンの若き友人、ロナルド・F・ジェサップをモデルにした人物である。
 フリーマンは彼に自著のサイン入り初版本を贈呈したが、第二次大戦中の空襲によりジェサップの居宅とともに焼失したため、フリーマンは改めてサイン入り本を彼に贈呈したとされる。その一つが、ノーマン・ドナルドスンの“In Search of Dr. Thorndyke”に写真入りで紹介されている上記『ペンローズ失踪事件』の第三版である。実物をよく見ると、遊び紙にジェサップ自身のサインも入っている。
 最近気づいたのだが、“John Thorndyke’s Journal”第二巻によれば、1991年1月にジェサップの蔵書がオークションにかけられたという。その中には彼の考古学上の著作のほか、フリーマンのソーンダイク博士物が13冊含まれていて、いずれも、フリーマンのサインと1940年11月という日付が入っていた。
 その中には、“The Shadow of the Wolf”、“The Mystery of Angelina Frood”、“Helen Vardon’s Confession”、“The Exploits of Danby Croker”、『ポッターマック氏の失策』、“A Silent Witness”の初版本も含まれていて、特に“A Silent Witness”に高値が付いたそうである。
 ところが、くだんの『ペンローズ失踪事件』は、この時のオークションの対象に含まれていなかったという。「ジェサップの家族が手元に残したか、個人的に売却した」と説明されているのだが、それ以上の説明はないことからすると、実際の事情はよく分からなかったのだろう。
 以前の記事でも書いたとおり、この本はドイツの古書業者から購入したものなのだが、値段もさほど高額ではなく、業者がその本の価値に十分気づいている様子はなかった。手に入れたのは全くの僥倖だったと思っている。
 ドナルドスンの研究書は1971年に出ているので、少なくともこの時点では、ジェサップの手元にあったことになる。その後どういう経緯を経てドイツに渡ったのかもまったく不明だし、上記“John Thorndyke’s Journal”の情報に接して、1991年のオークションの時点でどこにあったのかも曖昧なことが判明し、謎が解明するどころか、ますますわけが分からなくなった。
 いずれにしても、貴重な本であることに変わりはなく、宝物の一つとして大切にしていきたいと思っている。

Penrose
スポンサーサイト

テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

S・フチガミ

Author:S・フチガミ
お問い合わせ等は
fuhchin6491
(アットマーク)
hotmail.co.jp
へどうぞ

カテゴリ
フリーエリア
天気予報
リンク
検索フォーム
アクセスカウンター
RSSリンクの表示