クリフォード・ウィッティング “Midsummer Murder”

 “Midsummer Murder”(1937)は、チャールトン警部の登場する長編。ウィッティングの長編としては、“Murder in Blue”(1937)に続く二作目にあたるが、それより前に起きた事件という設定になっている。

 事件は、7月7日、ダウンシャーという小さな町のポールスフィールドという広場で起きる。その日は広場に市の立つ日で、大勢の人たちが賑わう中、広場の中央に建つ、馬に跨るショーフォード卿の彫像を清掃していたトマス・アーンショーという作業員が射殺される。広場では恒例の牡牛の解き放ちで人々が騒然とし、工事の空気ドリルの音もあって、射撃音に気づいた者はほとんどいなかった。被害者の銃創の位置や彫像が防壁の役割を果たしていたことから考えて、スナイパーは広場の北側から撃ったものと考えられた。
 チャールトン警部は、北側の建物の住人に尋問するうちに、建物の一つに住むアーチャー夫人という未亡人から、事件の直後、彫像の周囲に集まる群衆を尻目に、一人だけ、なにかを手に持って広場を足早に去っていく男の後ろ姿を目撃したという情報を得る。
 ところが、射殺される直前に清掃をしていたアーンショーの姿を捉えた写真が「イヴニング・メッセンジャー」紙に掲載され、それがアーサー・ランサムという青年写真家がたまたま撮影した写真であることが分かる。ランサムは、偶然、スクープ写真を撮ったことに気づき、急いで写真を持ち込もうと、事件直後にカメラを持って広場を立ち去る姿をアーチャー夫人に目撃されていたのだった。
 二日後の早朝、今度は、そのランサム青年が、広場を横切って行こうするところを背中を撃たれて殺される。早朝だったため、広場に人はおらず、夜警が倒れている青年に気づき、警察に通報する。青年はカメラを家に置いたままであり、そんな早朝に何の目的で出かけたのかは、家族も知らなかった。
 銃弾から、二つの事件に使われた銃は同一であり、第一次大戦中にドイツ人将校により使用されたパラベラムという自動装填式の銃と判明する。
 さらに、その日の夕刻、アントニー・ハンフリーズという隣村のバージェストン在住の男が、やはり広場で頭を撃たれ、瀕死の重傷を負う。被害者の三人を結びつける線は乏しく、チャールトン警部は、狂人による無差別連続殺人の可能性を疑い始める・・・。

 本作は、“Detective Fiction: The Collector’s Guide”の編者の一人、B・A・パイクがパースナル・チョイスに選んでいる作品であり、ウィッティングの代表作の一つである。
 いわゆる連続殺人ものであり、作者が途中で明らかにしているように、最終的に五人が撃たれることになるのだが、そこにも技巧派らしい作者の伏線があり、被害者の選択にも趣向が凝らされているのに気づく。
 一見無関係に思える被害者を結びつけるファクターが何であるかは、それなりに伏線を散りばめてはあるものの、容易に気づけるものではなく、動機の合理性という問題とも相まって、特に謎解き志向の本格ファンには得心し難い面があるだろう。(“A Catalogue of Crime”のバーザンとテイラーも、好意的に評しつつも、動機の点に難色を示している。)フェアかどうかを厳密に問えば議論を醸しそうなところではあるが、連続殺人をテーマにしていることもあり、退屈な尋問シーンで中間部がだれることもなく、読み応えという点では、他の代表作である“Measure for Murder”や“Catt Out of the Bag”よりずっと楽しめる。犯人の意外性という点でも、ウィッティングの作品の中では成功している部類に入るだろう。
 結びに、ディテクション・クラブと当時の会長だったE・C・ベントリーへの言及が出てくるところもご愛嬌だろう。無論、ウィッティングも所属していたからだろうが、ディテクション・クラブの厳格な誓約にこだわらない反骨児的なところがウィッティングの持ち味でもあったといえるかもしれない。
 なお、私が所持しているのは1939年版のペーパーバックだが、上記“Detective Fiction: The Collector’s Guide”によれば、1953年に大幅な改訂版が出ているとのこと。私の所有するペーパーバックには、扉に作者ウィッティングの署名が入っている。

Midsummer Murder
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