脱線の余談――意外なゲスト・スターたち

 「刑事コロンボ」のコンプリート・ブルーレイ・ボックスをようやく全て観ることができた。それこそ小学生の頃から観ていたシリーズだが、通しで観ると、意外と観たことのなかったものもあれば、けっこう忘れているものもあるのに気づく。それに、当時は気づかなかった意外なゲスト・スターたちにも改めて気づき、なかなか豪華キャストだったと新たな発見をしたような気がしたものである(もちろん知っていた例もあるけれど)。
 これでもシネマ・ファンなのだが、意外と驚いたのは、「偶像のレクイエム」に、衣装デザイナーのイディス・ヘッドが登場していたこと。オスカー像がずらりと並んでいるシーンも出てくるが、なにしろ通算で衣装デザイン賞を8回も受賞した人だ。オードリー・ヘプバーンといえば、ジヴァンシーを連想する人も多いが、初期の「ローマの休日」、「麗しのサブリナ」はイディス・ヘッドが担当したもの。エレガンスを貴んだ彼女は当時はやりのミニ・スカートを嫌ったが、ジュリー・クリスティが彼女の目をかいくぐってミニをはいてオスカーの授賞式に臨んだというエピソードもよく知られている。
 「ロンドンの傘」に登場するオナー・ブラックマンは、「ゴールドフィンガー」でボンド・ガールのプッシー・ギャロアを演じた女優だが、薹が立ってしまったとはいえ、ショーン・コネリーのようなニヒルなタフガイではなく、コロンボと共演というのもなかなかいい味。意外と目立たないが、殺されてしまう執事役で出ていたのは、ウィルフリッド・ハイド・ホワイトで、「マイ・フェア・レディ」に出ていたピカリング大佐だ。
 007ということなら、「オクトパシー」で敵役を演じていたルイ・ジュールダンが「美食の報酬」の犯人役を演じている。「恋の手ほどき」では二枚目役だったのに。
 ボンドの仇敵、ブロフェルドを「007は二度死ぬ」で演じたドナルド・プレザンスは、「別れのワイン」で犯人役を演じているが、ブロフェルドとは打って変わってかわいらしいオジサンになっている。
 イアン・フレミングつながりなら、0011ナポレオン・ソロを演じた、ロバート・ヴォーンも、「歌声の消えた海」、「さらば提督」に出演している。
 「忘れられたスター」の犯人役は、ジャネット・リー。ヒッチコック監督「サイコ」の有名なシャワー・シーンで殺される女優。よくぞ老醜をさらりと演じてみせたものだ。「サイコ」でその姉の役を演じていたのが、「毒のある花」で犯人役を演じているヴェラ・マイルズ。
 そのヒッチコックとの対話でも知られるフランソワ・トリュフォー監督の「突然炎のごとく」、「華氏451」に主演したのが、「ビデオテープの証言」のオスカー・ウェルナー。どうやらテレビ・ドラマに出演したのは、これ1作だけらしい。
 同じシリーズの共演ということなら、「スター・トレック」のカーク船長役だったウィリアム・シャトナーは「ルーサン警部の犯罪」、「4時02分の銃声」の犯人役、スポック役のレナード・二モイは「溶ける糸」の犯人役である。
 極めつけは、「第三の終章」に登場しているミッキー・スピレーン。自らマイク・ハマーまで演じてしまった人だし、役者は第二の職業みたいな人だったのかもしれないが、なんと被害者役。なので、コロンボとは出会わずじまいだが、ピーター・フォークと一緒に演じているところを観たかったなあ・・・。
 「死の方程式」のロディー・マクドゥウォールは、もともと子役でならした人で、ジョン・フォード監督の「わが谷は緑なりき」にも子役で出ていたし、年長じてからは「猿の惑星」や「ヘルハウス」などでもおなじみだが、「地中海殺人事件」にレックス・ブルースター役で出ていたのを憶えている人もいるだろう。
 同じ「ヘルハウス」に出演していたクライヴ・レヴィルは、旧シリーズ最後の「策謀の結末」で犯人役を演じている。
 ちなみに、この犯人、酒のボトルに指輪で傷をつけ、「ここまで、ここを過ぎず」と言って飲む量を決めるのだが、最後に、コロンボがこのセリフをまねて、「ここまで、ここを過ぎず(This far, no farther)」と言って締めくくる。つまり、「このシリーズもここまできたけど、これ以上はないよ」という、旧シリーズの最後にふさわしい決めゼリフになっているのだ。
 「愛情の計算」のホセ・ファーラーは、「シラノ・ド・ベルジュラック」でオスカーを獲った俳優で、「アラビアのロレンス」にも短いながらも印象的な出演をしていた。
 新シリーズにもかなりの大物が出ていて、「奇妙な助っ人」のロッド・スタイガーは、「ドクトル・ジバゴ」のコマロフスキー役も有名だが、ジョン・ボールの『夜の熱気の中で』を映画化した「夜の大捜査線」でギレスピー署長を演じてオスカーを獲った人。
 「恋に落ちたコロンボ」では、「俺たちに明日はない」、「ネットワーク」などで知られるフェイ・ダナウェイが犯人役を演じている。
 「祝砲の挽歌」はじめ新旧シリーズ通算で4度も犯人役を務めたパトリック・マクグーハンは、アカデミー作品賞を受賞したメル・ギブソン監督映画「ブレイブハート」でエドワード一世を演じた人だ。
 こうして振り返ると、すごいシリーズだったとため息が出てしまう。なにより、このシリーズで通算4度もエミー賞を受賞したピーター・フォークが最大のスターだろう。この人が亡くなってしまっては、シリーズの再開などあり得ない。代わりの俳優など想像もつかないし、ウィリアム・リンクがいくら新作を書こうと、フォークあってのコロンボだ。機会があったら、またゆっくり観てみたい。
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