ポアロ復活か――“The Monogram Murders”がリリース予定

 9月4日にエルキュール・ポアロの登場する新作、“The Monogram Murders”が英ハーパー・コリンズ社から発売される予定となっている。
 といっても、クリスティの遺稿が発見されたわけではない。ソフィー・ハンナという作家が、クリスティの遺族の許可を得て執筆した作品だ。ハンナは、これまで9冊のスリラーを書き、27か国で売れているベストセラー作家ということである。本作は既に28か国語で発売予定というのだから大変な力の入れようだ。いずれ日本語訳も出るかもしれない。
 これまでにも著名作家の死後に、他の作家がシリーズを書き継ぐという例は幾つもあった。イアン・フレミングの007もそうだし、レックス・スタウトのネロ・ウルフもそうだ。「ビッグ4」をとってみても、アリンガムのアルバート・キャンピオンのシリーズは、夫のフィリップ・ヤングマン・カーターが書き継ぎ、そのヤングマン・カーターが未完で遺した原稿をマイク・リプリーが補筆完成させた“Mr. Campion’s Farewell”が今年発売されている。セイヤーズのピーター卿シリーズも、ジル・ペイトン・ウォルシュが書き継ぎ、今年も“The Late Scholar”という新作が出ている。
 ただ、他者が書き継いだシリーズというのは評価が難しい。バリイ・ペロウンが書き継いだホーナングの怪盗ラッフルズのシリーズのような成功事例も思い浮かぶが、独自性を発揮すればオリジナルと違うと言われるし、模倣しすぎると新味がないと言われるわけで、どうしても厳しい目で見られてしまうからだ。実際、オリジナルに匹敵するほどの好評を得た例は少ないというのが現実だろう。ハンナがどんな工夫を凝らして書いているかが注目されるところだ。
 “The Monogram Murders”が好評を得れば、今後さらにシリーズとして書き継がれていく可能性もあるだろう。クリスティが意思を曲げて『カーテン』を生前に発表したのは、出版社から、ポアロを今のうちに殺してしまわないと、あなたの死後に誰かが書き継ぐぞと言われたことが引き金になったという俗説もあるのだが、その事の真偽はともかく、ファンの中には、どんな形であれ、ポアロの健在ぶりをもう一度みたいという読者もいるかもしれない。“Hercule Poirot and the Greenshore Folly”のように埋もれた作品がさらに出てくる可能性は少ないだろうし、この新作が世界中のファンからどんなふうに受け止められるか、なかなか興味深いところだ。
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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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No title

クリスティー関係でそんな動きがあるんですね。
芦辺拓が名探偵博覧会でポアロの贋作やろうとしたら、権利関係で名前が出せないまま「そしてオリエント急行から誰もいなくなった」という労作を書いてましたが、権利がとれていいなーという感じです。
翻訳されますかねー出たら読んでみたいかな。

なにしろまだリリース前だし、中身も読まないうちにあれこれも言いにくいもので、どうしても書き方が慎重になってしまうのですが、さて、どんな反響がありますかね・・・。
パロディなら、ジョン・L・ブリーンやボワロー&ナルスジャックも書いてるけど、真面目な贋作となると、プロットの水準も問われるし、ましてクリスティともなれば、読者が要求するハードルは高そうな気も・・・
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