アガサ・クリスティ 幻の戯曲「娘は娘」

 日本では敬老の日だが、1890年の今日はアガサ・クリスティの誕生日でもある。
 クリスティには未刊行の作品が幾つか残っているとされるが、戯曲では‘Chimneys’のほか、「娘は娘」(Daughter’s a Daughter)もそうだ。
 ジャネット・モーガンによれば、この戯曲は本来、1930年代後半に書かれたもので、1950年に古い書類の中からクリスティ自身が再び原稿を見つけたという。クリスティは上演実現の期待を持ったらしく、プロデューサーのピーター・ソーンダーズは時代にそぐわなくなった部分の修正を求め、クリスティもこれに応じたが、出演を引き受けてくれる女優がおらず、なかなか実現しなかったようだ。
 リチャード・ダルビーの‘Spotlight on Agatha Christie’によれば、「娘は娘」は、1956年7月9日に、バースのシアター・ロイヤルで初演が行われ、地元紙の批評も決して悪くはなかったようだが、わずか一週間の公演で打ち切られたという。但し、モーガンによれば、メアリ・ウェストマコット作として上演されたが、途中から作家の正体が明らかになったため、劇場は満員だったとしている。しかし、ソーンダーズは、ウェスト・エンドでは成功しないと踏み、ロンドンで上演されることはなかった。
 モーガンの伝記における書き方は紛らわしく、クリスティがバースでの公演ののちに、この戯曲をメアリ・ウェストマコット名義の同題の小説にリライトしたかのように書いているのだが、実際は、小説『娘は娘』は1952年の発表なので、バースでの公演より先に小説は書かれ、出版されていたわけだ。
 この戯曲の著作権は、クリスティの死後、娘のロザリンド・ヒックスに移ったが、彼女は、この作品の主人公が自分自身をモデルにしていると考えたらしく、このため、この戯曲の上演に乗り気ではなかったらしい。2004年にロザリンドが亡くなった後、クリスティの孫、マシュー・プリチャードがその経緯を明かし、この作品は、2009年にウィンザーで試演が行われ、同年12月14日に、ようやくウェスト・エンドで上演されたらしい。だが、単行本化は未だ実現していない。
 内容は小説を通じてほぼ分かっているし、ミステリではないので、それほど食指の動く対象ではないのだが、‘Chimneys’ともども、いずれは刊行されることを期待したい。
スポンサーサイト

テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

S・フチガミ

Author:S・フチガミ
お問い合わせ等は
fuhchin6491
(アットマーク)
hotmail.co.jp
へどうぞ

カテゴリ
フリーエリア
天気予報
リンク
検索フォーム
アクセスカウンター
RSSリンクの表示