「計画殺人事件」

 「計画殺人事件」は、『歌う白骨』収録作品の中でも、最も込み入った初出の経緯がある。
 デビッド・イアン・チャップマンの書誌によれば、ピアスン誌1912年1月号に掲載されたのが初出とされる。ところが、この短編は、それ以前に、アメリカのマクルーア誌1910年8月号に掲載されているのだ。したがって、マクルーア誌掲載がこの短編の真の初出ということになる。
 さらに言えば、実際に書かれた順序はともかくも、初出という点では、ノヴェル・マガジン1910年8月号に掲載されたという「落ちぶれた紳士のロマンス」と並んで、初めて世に出た倒叙推理小説ということになる。少なくとも、「刑事コロンボ」シリーズを生んだ国で初お目見えした倒叙物というわけだ。
 マクルーア誌版、ピアスン誌版、単行本収録版を比較すると、冒頭部分から異同があり、第一部、第二部の書き出しが雑誌版では一致しているが、単行本版では加筆が加えられてより詳しくなっているのが分かる。
 雑誌版同士を比較しても、本文は、ピアスン誌版とマクルーア誌版はほぼ同じだが、標題が異なっている。
 マクルーア誌では、第一部の標題はなく、第二部の標題が‘Jervis Speaks’となっている。ピアスン誌では、第一部が‘An Artist in Murder’、第二部が‘An Artist in Detection (How John Thorndyke, Detective, sifted out the real clues from the false — narrated by Dr. Jervis, his assistant.)’となり、第一部で犯罪の経緯を描き、第二部で探偵による解明の過程を描くという倒叙の構成をさらに分かりやすく表すものとなっている。
さらに、単行本では、第一部が‘The Elimination of Mr. Pratt’、第二部が‘Rival Sleuth-Hounds (Related by Christopher Jervis, M, D.) ’と更に変化している。
 倒叙物の標題としては、ピアスン誌の標題がその構成を最も効果的に表していると思えるが、単行本では、「オスカー・ブロズキー事件」に続く二編目に当たるので、倒叙としての構成を改めて示すより、内容をより分かりやすく表す標題に変えたのではないだろうか。
 マクルーア誌では、ヘンリー・ローリー、ピアスン誌ではおなじみのH・M・ブロックがそれぞれ挿絵を描いている。いずれも違う場面を描いていて重複しないが、雰囲気がまるで違うのが面白い。

マクルーア誌の挿絵

計画殺人事件01

計画殺人事件02

計画殺人事件03

計画殺人事件04

計画殺人事件05



ピアスン誌の挿絵

計画殺人事件06

計画殺人事件07

計画殺人事件08

計画殺人事件09
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ジャンル : 小説・文学

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