レックス・スタウト “Plot It Yourself”

 “Plot It Yourself”(1959)は、ネロ・ウルフとアーチー・グッドウィンが登場する長編。

 ウルフがフィリップ・ハーヴェイの『神々はなぜ笑うのか』を読んでいるところに、そのハーヴェイ自身から電話がかかってくる。ハーヴェイは、出版社と作家・劇作家たちが共同でつくった剽窃問題に関する委員会の議長であり、その問題についてウルフに面談したいという。翌日、ハーヴェイは、作家と出版社の代表五人を引き連れてウルフのオフィスにやってくる。
 彼らの説明によれば、ここ四年の間に、売れっ子作家たちが次々と剽窃問題で訴えられていた。最初の被害者は、エレン・スターディヴァント。彼女は、アリス・ポーターという無名の作家志望の女性から、意見をもらうために自分が送った原稿から筋書を盗まれたと訴えられた。エレンはその訴えを無視するつもりだったが、ポーターが送ったと称する原稿が彼女の家で見つかる。エレンは身に覚えがなく、その原稿がこっそり置かれたものと考えていたが、裁判沙汰になるのを恐れてアリスに8万5千ドル支払って解決していた。その後も、ほかに二人の売れっ子作家たちに同様の事件が起きていて、既に三人の作家たちが屈服して支払いに応じていた。そして、四件目の訴えが現在起きているという。最初の事件で剽窃を訴えたアリス・ポーターが、再び、エイミイ・ウィンという作家を剽窃で訴えていたのだ。
 ウルフは、告発者たちが送ったと称している原稿を入手して文体を調べるが、その特徴からそれらの原稿がいずれも同一人物の手によって書かれたものであることを看破する。ウルフは、告発者の一人に金を提供し、訴えないと約束してその人物を暴露させるよう委員会に提案し、了承を得る。
 アーチーは、告発者の一人、サイモン・ジェイコブズのアパートを訪れるが、そこにはパーリー・ステビンズ部長刑事が待っていた。ステビンズは、ジェイコブズが刺殺されたことを告げる・・・。

 出版業界を舞台にした作品としては、ほかに『編集者を殺せ』(1951)があり、女性編集者の死の謎をめぐるストーリーだった。本作では、小説や劇のプロットを剽窃されたと訴えた告発者たちが次々と殺されていくという連続殺人を扱っている。
 『手袋の中の手』や『苦いオードブル』に登場する、スタウトのもう一人のシリーズ・キャラクター、ドル・ボナーが登場しているのは、ちょっとした読者サービスなのだろうが、残念ながらたいした見せ場はなく、ソール・パンザーら、ウルフの常連の部下たちに混じり、ウルフの指示に従って足を使った調査に協力しているだけだ。
 この頃の作品になると個々の場面も登場人物の動きもマンネリの傾向が顕著になり、プロットも締まりのないものが多くなってくるのだが、本作は作家や出版社というスタウトにとっても馴染みの世界を舞台にしているせいか、ストーリー展開にもそれなりに勢いがあってまずまず読ませる。連続殺人という設定が中だるみを回避するのに寄与している面もあるが、プロットも破綻せずにうまくまとまっている。ロビン・ウィンクスのようにベストの一つに挙げる評者がいるのも分からなくはない。


Plot It Yourself
米初版ジャケット
スポンサーサイト

テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

S・フチガミ

Author:S・フチガミ
お問い合わせ等は
fuhchin6491
(アットマーク)
hotmail.co.jp
へどうぞ

カテゴリ
フリーエリア
天気予報
リンク
検索フォーム
アクセスカウンター
RSSリンクの表示