クリスティの新発見ラジオ・ドラマ “Agatha Christie: The Lost Plays”

 以前の記事で紹介したCD、“Agatha Christie: The Lost Plays”を入手し、さっそく聴いてみた。収録作は以下のとおり。

‘Butter in a Lordly Dish’(1948)
 収録されているのは、1956年3月放送のバージョン。

‘Personal Call’(1954)
 収録されているのは、1960年11月放送のバージョン。

‘Murder in the Mews’(1955)
 クリスティの中編「厩舎街の殺人」をアントニー・アスピナルが脚色したもの。

 ‘Butter in a Lordly Dish’は、旧約聖書士師記第5章25節の「貴き盤に乳の油」に由来する。
 辣腕の弁護士、ルーク・エンダービー卿は、連続殺人の容疑者、ヘンリー・ガーフィールドに有罪の評決をもたらす。卿は、リヴァプールに行くと妻に偽って、パディントンに愛人のジュリア・キーンに会いに行く。ジュリアのコテージに案内されたルーク卿は、食事をふるまわれるが、コーヒーを飲んだ後、脚が引きつり、目がかすみ始める・・・。
 プロットは、‘The Woman of Kenite’と似ているが、背景設定や動機づけは大きく異なる。

 ‘Personal Call’(1954)は、以前の記事で紹介したとおり、本来、「ディテクション・クラブ」の企画の一つとして放送されたものだが、アーカイヴに残っていたのは1960年放送のクリスティの同作のみで、1954年のオリジナルは現存せず、他の作家の録音も残っていなかったようだ。
 ブレント夫妻の家で催されたカクテル・パーティーの最中、ジェイムズ・ブレント氏に指名通話の電話がかかる。それはフェイと名乗る女性からの電話で、彼女はニュートン・アボット駅で7時15分に待っているとジェイムズに告げる。それはまさにその時間に同駅でめまいを起こして線路に転落し、列車に轢かれて事故死した前妻の名であり、声も彼女の声だった。ジェイムズは、現在の妻、パムとともに、指定の時間に駅に赴く・・・。
 『シタフォードの秘密』のナラコット警部も登場するが、ラストのほうでわずかに出てくるだけで、特に重要な役割を演じているわけではない。

 いずれもスリラーに属するもので、前者は女の哄笑で終わる結びがいかにも不気味だし、後者はオカルト的な結びが余韻を残す。古い録音であるにもかかわらず、音は非常に鮮明で聴き取りやすい。
 ボーナスとして、クリスティ自身のインタビューやスピーチ等も収録されていて、彼女の肉声が聞ける。特に、「ねずみとり」公演10周年の際のスピーチは実に雄弁でユーモアに溢れ、シャイでインタビュー嫌いだったというのはただの俗説ではないかと思えるほどだ。
スポンサーサイト

テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

S・フチガミ

Author:S・フチガミ
お問い合わせ等は
fuhchin6491
(アットマーク)
hotmail.co.jp
へどうぞ

カテゴリ
フリーエリア
天気予報
リンク
検索フォーム
アクセスカウンター
RSSリンクの表示