ヘレン・マクロイ “The Changeling Conspiracy”

 “The Changeling Conspiracy”(1976)は、非シリーズ物の長編。

 ストーリーはサム・ジョエルという32歳の新聞記者の一人称で進行していく。サムには、ケイト・エンディコットという恋人がいたが、彼女はまだ18歳だった。父親のアダム・エンディコットは、考古学者としてベトナムに滞在していた時に結婚したベトナム人との女性の間にケイトを儲けたが、離婚して娘をアメリカに連れ帰っていた。サムも地方通信員としてベトナムに駐在していたことがあったが、当時はアダムと面識はなかった。
 サムがエンディコット家に滞在していた時、ストッキングをかぶった男女が家を襲い、サムは銃で撃たれて重傷を負い、ケイトは誘拐されてしまう。退院後、アダムから連絡を受けたサムは、誘拐犯からアダムに身代金の要求があったことを知る。アダムは誘拐犯からの電話を録音したテープをサムに聞かせる。誘拐犯は、抑圧された者の救済を使命とする〝新ハシャシン任務部隊〟のシェイク・アル・ジェバルと名乗り、活動資金が必要であり、明日の晩までに10万ドルを用意しろと要求していた。テープにはケイトの声も録音されていた。警察に知らせるべきだという説得に応じず、アダムは単独で身代金を持参することにする。
 翌日は日曜だったため、アダムは資金繰りに困るが、サムは自分の資金も提供してなんとか必要額を工面する。誘拐犯の電話連絡を受け、アダムは取引場所に赴くが、あとをつけたサムはアダムの車を見失ってしまう。アダムの行方が分からなくなったあと、何者かがアダムの家にカセット・テープを付けた石を窓から投げ込む。再生すると、それは以前の電話と同じ男の声で、アダムが約束を守らなかったことを責め、ケイトが自分たちの主義に賛同して仲間となったことを告げる内容だった。ケイトの声も収録されていて、自分が〝新ハシャシン〟のメンバーとなったことを告げていた。
 しばらくして警察から連絡が入り、サムは、アダムの車が見つかり、運転席に座ったまま額を撃ち抜かれたアダムの死体が発見されたとの知らせを受ける・・・。

 マクロイの後期作品らしく、仕立てはサスペンスだが、謎解きのファクターもある。テロ集団への転向を宣言したのは、本物のケイトなのか、それともすり替わった偽者なのか、という謎がタイトルの意味だが、「なりすまし」テーマはこの頃のマクロイが繰り返し使ったネタで、いい加減マンネリの感があるし、謎自体も消化不良のまま尻すぼみに終わっている。サム自身の正体と出自の謎などがサブプロットとして描かれるが、これもなにやら中途半端にエスピオナージュ仕立てで、さほど興味をかきたてない。
 ケイトの居場所を探し続けるサムの行動がストーリーの中心を占め、謎のテロ集団の核心に迫っていく描写はまずまず読ませるが、最近の国際ニュースを賑わせるテロ事件を知る者の視点からすると、なにやらちんけで拙劣な集団のような印象を受けてしまうし、その結末もいかにもあっけない。
 アダムを殺したのは誰か、という謎が終盤になって浮上し、にわかに謎解き仕立てになるのだが、犯人や動機の意外性にはそれなりに見るべきものがあるものの、最後に取って付けたように出てくるため、いかにも添え物の感が否めず、もう少しこのプロットをうまく膨らませていれば面白くなったのではと思えて残念でならない。


Changeling Conspiracy
米ドッド・ミード社初版ダスト・ジャケット
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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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