ジョン・ロード “Robbery with Violence”

 “Robbery with Violence”(1957)は、プリーストリー博士とワグホーン警視が登場する長編。

 フェンダイクという町の〝キャピタル・アンド・プロヴィンシズ・バンク〟の支店で盗難事件が起きる。9750ポンドの紙幣が金庫室から消えているのが発見されるが、金庫には破られた形跡がない。金庫室に保管されていたそれ以外の文書類や貴重品は手つかずのまま残っていた。
 金庫には使い古しや汚れで流通に適しなくなり、廃棄処分される予定の古紙幣が集積されていて、10万ポンドに達するとロンドンの本店に送るようになっていた。月曜の午後にビルストン支店長が確認した時には金庫室にあったはずの紙幣の束が、水曜の朝に確認した時には完全に消えていたという。
 銀行の職員は7人だったが、ビルストン支店長の話では、どんな強盗にも金庫を開けるのは不可能だという。金庫室の格子と扉、その中の金庫や戸棚はもちろん施錠されていて、格子や金庫はそれぞれ二つの鍵で施錠され、それぞれの鍵は別の職員が持っていた。
 鍵はそれぞれの職員が肌身離さず身に付け、二重の施錠があるものは、一人の職員が両方の鍵を一度に手にすることは決してなかった。夜間に盗まれたとは考えにくく、しかも、重さ27ポンド超の五百枚一組の23束もの紙幣を持って、昼日中に他の職員に見とがめられずに出入りできたとも考えられない。複数の職員が共謀しない限り、格子と金庫の扉を開けて紙幣を盗むことは不可能だったが、そんな共謀が実際にあったとも考えられなかった。
 ウェストボーン・テラスでの土曜の例会で、ワグホーン警視の説明を聴いたプリーストリー博士は、盗まれた金は銀行から外には出ていないはずだと示唆する。その後、事件の捜査が進展しないまま数か月が過ぎたあと、再びフェンダイクで事件が起きる。
 村はずれの道を自転車で走っていた警官が道路横の草が黒焦げになっているのに気づき、調べてみると、脇の溝に男の死体と男が乗っていたらしいバイクを見つける。男の顔や衣服は焼け焦げていたが、ポケットに入っていた運転免許証から、マンチェスターに住むエドガー・チェルムスフォードと判明。死因は頭を殴打されたものだった・・・。

 ハウダニットを得意としたロードらしく、金庫からの紙幣の消失という不可能興味の横溢する発端の事件はまずまず読ませるが、その事件の展開はいったん途切れ、ストーリーの焦点は別の殺人事件に移ってしまう。その後の展開は、後期の作品だけあっていかにも緩慢で、事件関係者たちの描写も薄っぺらで読み応えがなく、じれったいほどの退屈さを感じる。
 二つの事件が関連していることはたいていの読者に予想がつきそうで、その結果、紙幣盗難の犯人が誰なのかも、その金の行方もすぐに見当がついてしまう。殺人事件のほうにはさほどの謎もなく、月並みな展開で、穿った見方をすると、冒頭の盗難事件の謎だけでは紙数を埋められないため、後続の殺人事件を設けて長編に引き伸ばしたのではないかと思えてならない。終わりのほうで二つの事件の結びつきが見え、紙幣盗難の謎解きもなされるが、その解決は冒頭の謎の魅力に比べるとあまりに肩透かしだ。“A Catalogue of Crime”のバーザンとテイラーは、「実に巧妙な計画」として実行可能性の見込みを示唆しているが、謎解きとして見る限りではつまらなく魅力に乏しい。
 これも後期作品の特徴だが、プリーストリー博士は土曜の例会でワグホーン警視に示唆を与えるだけで登場場面は少なく、殺人も盗難も実際に謎解きをして解決するのはワグホーン警視だ。事件の展開に起伏なく、登場人物に魅力なく、謎解きに独創性なく、カリスマ的な探偵役に見せ場なしときては、どうにも救いようがない。
スポンサーサイト

テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

S・フチガミ

Author:S・フチガミ
お問い合わせ等は
fuhchin6491
(アットマーク)
hotmail.co.jp
へどうぞ

カテゴリ
フリーエリア
天気予報
リンク
検索フォーム
アクセスカウンター
RSSリンクの表示