スチュアート・パーマー “Murder on Wheels”

 “Murder on Wheels”(1932)は、『ペンギンは知っていた』に続く、ヒルデガード・ウィザーズの登場する二作目の長編。

 雪の降るラッシュアワーのマンハッタンの大通りで、交通整理に当たっていたドゥーディー巡査の目の前で青いクライスラーのオープンカーがいきなり左に逸れ、対向車のタクシーに衝突する。
 ところが、ドゥーディーがクライスラーに駆け寄っても、車内に運転手の姿はない。衝突されたタクシーの運転手に尋ねると、30ヤードほど離れた歩道を指さしたため、既に野次馬が群がる中をかき分けていくと、青年が仰向けに倒れていた。青年はこと切れていたが、その首にはロープが巻きつき、喉に食い込んでいた。
 ドゥーディーは自殺者ではないかと考えるが、すると、そばにいた山高帽をかぶった青年が死体を見て、「ローリー・ステイトじゃないか!」と叫ぶ。ドゥーディーは、死体の身元を知っているらしい青年の手を借りて死体を近くのビルの前まで運ぶ。オスカー・パイパー警視も現場にやってくるが、その青年はいつの間にか姿をくらましてしまう。警視は死体のポケットを探るが、なぜか財布が出てこない。そこへミス・ウィザーズも姿を現す。
 警視はクライスラーの運転手は事故後に逃げたものと思い、衝突されたタクシーの運転手に、相手の車の運転手はどこに行ったのかと尋ねるが、タクシーの運転手は、死体の青年がその運転手だったと言う。タクシーの運転手は、死んだ青年が運転席から中空へと飛び上がり、うしろ向きに車から飛び出して道路へと放り出されたと証言する・・・。

 なにやら不可能犯罪めいた冒頭の謎が興味を引くが、その謎自体は意外と呆気なく、比較的早い段階でほぼ解明されて、さほど感心するような仕掛けがあるわけでもない。むしろ荒唐無稽で、実行可能性に疑問がつきそうな代物だ。
 プロットはむしろ、一卵性双生児の兄弟と相続や結婚をめぐる人間関係を中心に展開するが、これも比較的単純で、推理小説を読み慣れた読者なら、多くの伏線から比較的早い段階で概ね見当をつけてしまいそうだ。
 ただ、デビュー作の前作に比べると、プロットの練り具合も一段と緻密さを増し、細部までよく考え抜かれているのが分かるし、パーマーは本作でようやく本領を発揮し始めたという印象を受ける。
 パイパー警視とミス・ウィザーズは、前作でハッピー・エンドを迎えたはずだったが、本作ではその予定が実現しなかったことが明かされる。二人がなぜ予定を変えたのかは、突然の警報に妨げられたという説明はあっても、動機についてはっきりした説明はない。ただ、どちらも〇〇主義者で、内心では妨げられてほっとしていたとの言及もあるので、真相はそのへんにあるのかもしれない。
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ジャンル : 小説・文学

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