フランシス&リチャード・ロックリッジ “The Norths Meet Murder”

 “The Norths Meet Murder”(1940)は、ジェラルド(ジェリー)とパメラ(パム)のノース夫妻が登場する最初の長編ミステリ。

 パメラは、自分たちの住むグリニッチ・プレースのアパートの最上階に、長い間空き部屋になっている部屋があることから、その部屋を借りて久しぶりにパーティーを開くことを夫のジェリーに提案する。
 パメラは、その部屋を見に行こうと言い、夫とともに部屋に向かう。ドアが閉じていたため、ジェリーは明日にしようと言うが、パメラは、昨日は鍵がかかっていなかったと主張して中に入る。部屋の中をチェックしながら、浴室のドアを開けると、そのバスタブには、頭を激しく殴られ、顔も潰された裸の男の死体が入っていた。
 夫妻の通報を受けて殺人課のワイガント警部補とマリンズ刑事が現場に来る。ワイガントは、男が殺されたのは前日の正午から6時までの間と推測し、発見者のノース夫妻を尋問し始めるが、パメラは前日には死体はなかったという。
 ワイガントから、昨日のことをすべて話してくれと言われたパメラは、飼い猫のピートが迷子になったことや、夕方のパーティーで出たロブスターの味が変だったことなど、とりとめもなく話し始める・・・。

 フランシス・ルイーズ・ロックリッジとリチャード・オースン・ロックリッジの夫妻が創造したノース夫妻は、1936年の“Mr. and Mrs. North”でデビューしたが、これは推理小説ではなく、探偵としてデビューしたのは本作においてである。
 郵便受けの名札の謎、駅で突き落とされて殺された郵便配達夫など、新たな謎が次々と加わる展開は、それなりに興味を持続させるが、全体のペースはあまりにスローで、埋め草的サブプロットも多く、退屈感は否めない。
 特に残念なのは、肝心の夫妻の登場場面が必ずしも多くないことで、中盤のほとんどは、ワイガントとマリンズによる捜査の描写で占められ、むしろこの二人のほうが主人公ではないかと言ってもいいほどだ。そのため、夫妻の魅力が十分描き切れておらず、キャラクターとしての面白さが活かされていない。
 ただ、パメラが犯人に追い詰められていくラストの緊迫したシーンはなかなか読み応えがあるし、パメラのとりとめもないおしゃべりの中に重要な手がかりが含まれているなど、謎解きとしての伏線の張り方も決して悪くはない。
 本作は、ヘイクラフト=クイーンの里程標、マーヴィン・ラッチマン(A Reader’s Guide to the American Novel of Detection)によるアメリカ推理小説ベスト100、ビル・プロンジーニ&マーシャ・マラー編“1001 Midnights”に選ばれるなど、デビュー作にして代表作と見なされることの多い作品だが、謎解きとしてはまあまあ悪くはないものの、読み応えも乏しく、さほどお勧めできるほどの出来栄えとは思えない。ノース夫妻のシリーズはユーモア・ミステリに分類されることが多いが、スチュアート・パーマーほどのドタバタがあるわけでもなく、ユーモアもどちらかと言えば控えめだ。
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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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