S・A・ステーマン『六死人』

 『六死人』(1931)は、フランスの犯罪小説大賞を受賞したスタニスラス・アンドレ・ステーマンの代表作。
 6人の青年が、世界中に旅立ち、稼いだ金を持ち寄って5年後に再会し、成功不成功の如何を問わず、皆で平等に分け合おうという取り決めをする。ところが、帰国したその6人が一人また一人と殺害されていく、というストーリー。
 クリスティの『そして誰もいなくなった』(1939)の先駆的作品とされることも多いようだが、コニントンの“The Sweepstake Murders”(1931)、ジョン・ロードの『プレード街の殺人』(1928)、“Death on the Board”(1937)など、似た設定の連続殺人ものは、それ以前から珍しいものではなかった。
 孤島というクローズド・サークルの設定において一人ずつ消されていく緊張感とサスペンスは、『そして誰もいなくなった』独特の醍醐味であり、最後に本当に誰もいなくなってしまうところもそうだ。『六死人』が同作の先駆というのは、読み終えてみれば、それなりに分からないわけではない面もあるのだが、いささか誇大広告めいていていただけない。
 それにしても、フランスの犯罪小説大賞といえば、ピエール・ボワローの『三つの消失』(1938)、トーマ・ナルスジャックの『死者は旅行中』(1948)なども受賞作だが、どうもフランスのミステリは、(言語の特性もあってか)読みやすいわりに、黄金期の本格派となると、プロットが単純で見抜きやすく、薄っぺらで肩透かしの印象が強い作品が目立つ。のちのボワロー=ナルスジャックのコンビやシムノンの作品に見られるように、サスペンスや心理描写に力を込めた作品のほうが特筆すべきものが多いようだ。
 本作も、ほとんど最初の段階で全体のプロットがほぼ読めてしまうようなところがあり、おそらくは推理小説を読み慣れた読者でなくともそうではないかと思えるほどだ。探偵役のヴェンス警部もさほど魅力的な個性があるわけでもなく、他の登場人物も薄っぺらすぎてほとんど区別がつかない。
 かつて「EQ」誌で本作の書評を書かれた数藤康雄氏は、「『そして――』の出来栄えにくらべれば、死人の数の割合どおり、六割程度だろう」と述べておられるが、それでもあまりに寛大なお言葉だ。
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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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