エリザベス・フェラーズ“Alive and Dead”

 “Alive and Dead”(1974)は、“A Stranger and Afraid”(1971)、 “Breath of Suspicion”(1972)、“Foot in the Grave”(1972)、“Blood Flies Upwards”(1976)と同じく、ディタリッジ警視(前作までは警部)の登場する作品。E・X・フェラーズ名義で発表された。

 マーサ・クレイルは、二度の離婚経験があり、それぞれの結婚で儲けた二人の息子がいる中年女性。以前は下宿屋を切り盛りしていたが、世話をしていた伯母から予想外の遺産を受け継ぎ、サイム氏という中年男性を除いて下宿人を引き払わせ、今は〝未婚の母の全国福祉組合〟で奉仕活動をしている。
 肌寒い秋の午後、秘書のオリーヴ・メイスンがインフルエンザで寝込み、組合長のレディー・ファーナスがカリブ海クルーズに出かけていたため、マーサは一人で編み物をしながら組合のオフィスにいた。そこへ、アマンダ・ハサルという若い娘が訪ねてくる。
 アマンダは、三年前に夫に逃げられたが、ドン・ターナーという博士課程の学生の子を身ごもったと言う。ドンは妊娠を喜んだが、アマンダは彼との結婚を望まず、両親は子どもを里子に出すよう求めたため、親元も飛び出してきたらしい。マーサは彼女に考える時間を与えるため、もともと下宿屋だった自分の家に連れて行く。だが、同居するサイム氏は、アマンダの説明に不審の念を抱く。
 翌日、マーサがオフィスに行くと、復帰したオリーヴから、サンドラ・アスピノールという、アマンダと同じ歳くらいの女性を紹介される。彼女はお腹の子の父親から中絶を条件に結婚を受け入れると言われ、中絶を許容できずに組合に支援を求めてきたという。マーサは、オリーヴから、サンドラが職を見つけるまで家に預かってほしいと頼まれる。
 マーサは、組合のオフィスの前に立ち尽くし、通りの向かいのコンプトン・ホテルをじっと見つめている不審な赤毛の青年に気づく。マーサがサンドラとともにオフィスを出ようとすると、向かいのコンプトン・ホテルからさっきの青年が女性とともに出てくるのを目撃する。その女性はアマンダだった。
 マーサが家に戻ると、アマンダが恋人のドンと口論しているのが聞こえる。そのあと、アマンダの両親も家を訪ねてきて、マーサは気を失う。サイム氏が両親に彼女の居所を知らせたのだった。両親の話では、アマンダの夫、ローリーは三年前にナイロビ行きの飛行機事故で死亡したのだが、彼女は夫の死を信じようとしないという。
 サイム氏がラジオを入れると、マーサが目撃したらしい青年がコンプトン・ホテルで射殺されたというニュースが流れ、アマンダと思われる特徴の女性を警察が探していると告げる・・・。

 本作は、“1001 Midnights”において、マーシャ・マラーがフェラーズの「ベストの一つ」と評している作品。
 家に受け入れた二人の妊婦が恋人や家族と悶着を起こすという、いかにもドメスティックな発端から、急転直下、殺人事件に発展し、幻想としか思えない、夫の生存を信じる娘の主張が実は真実であり、殺人の被害者だったという展開のうまさは、いかにもフェラーズらしいストーリー構築。それまで平穏だった下宿屋が、マーサを狙った銃撃事件、さらにはサンドラの絞殺と、修羅場と化していく展開も、やや荒唐無稽な印象はあるものの、起伏に富んでいてぐいぐいと引き込まれる。
 若干偶然に頼った面もあるが、これもフェラーズらしく、よく練り上げられた複雑なプロットで、登場人物をうまく描き分け、どんでん返しを繰り返しながら、最後は意外な犯人を明らかにする。全体として見れば、ややひねり過ぎの感もあるが、マラーが評価するように、フェラーズの作品の中でもツイストの利いた佳作と言えるだろう。
 なお、締めくくりの謎解きは、確かにディタリッジ警視がするのだが、登場場面は少なく、ほとんど目立たない。むしろ、サイム氏のほうが探偵役と言ったほうがいいかもしれない。この時期のフェラーズがシリーズ・キャラクターにさほど思い入れがなかったことが窺える。
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