ジョン・ロード“Twice Dead”

 ロードの『代診医の死』(1951)が5月に論創海外ミステリから刊行予定。お知らせに合わせて、久しぶりにロードの作品を取り上げよう。
 “Twice Dead”(1960)は、ロードの後期に属する作品の一つであり、ランスロット・プリーストリー博士の登場する長編。

 七代目の準男爵、フランシス・ヨーデイル卿は、遠縁にあたる家政婦のエセル・シャーランド夫人とともに〝アップランズ〟という邸に住んでいた。
 長男のフランシス卿は、六代目の準男爵だった父親の死により爵位と財産のほぼすべてを受け継いでいたが、独身だった。フランシス卿には四人の兄弟姉妹がいたが、卿は若い頃からひねくれたユーモアを発揮して自分の兄弟姉妹にたちの悪いいたずらを仕掛け、彼らから煙たがられていた。
 ある日、フランシス卿本人は息災だというのに、〝アップランズ〟に、卿の兄弟姉妹から花輪が続々と届き、エセルは仰天する。実はフランシス卿が〝タイムズ〟紙の訃報欄に自分の死亡記事を載せたためで、兄弟たちは訃報を信じて弔花を送ってきたのだった。
 フランシス卿は、弁護士から遺言書の作成を勧められ、初めは乗り気ではなかったが、遺言書のないまま死を迎えると、財産は兄弟姉妹に等分に分与されることになると言われ、それが気に入らないフランシス卿は、ついに遺言書の作成を決意する。
 フランシス卿は、大学時代の親友の子で、自分が名付け親となった、お気に入りのジョージ・ポーレットと、家政婦のエセルに、それぞれ10万ポンドを遺してやり、残りの5万ポンドを兄弟姉妹に分与することにした。ところが、フランシス卿は、またもやたちの悪いいたずらを考え、自分の死亡記事を見た兄弟たちの反応を見て遺産の配分額を決めることにしたのだった。
 卿が死んだ場合、八代目の準男爵となるエドガーは、安物の花輪しか送ってよこさなかったため、フランシス卿は一番高価な弔花を送ってきた弟のチャールズのほうに多額の遺産を遺すことにする。
 ところが、遺言書作成後の、ある金曜の朝、フランシス卿は、書斎で椅子に座ったまま、今度は本当に死んでいるのが発見される。死因は一酸化炭素中毒だったが、部屋には一酸化炭素を発生する要因となるものはなかった・・・。

 本作は、ロバート・エイディの“Locked Room Murders and Other Impossible Crimes”にも取り上げられている一種の不可能犯罪もの。一酸化炭素を発生させるメカニズムは、いかにもハウダニットを得意としたロードらしいが、その原理はシンプルで分かりやすいものの、とりわけ文科系の人にはなじみのなさそうな原理であり、大多数の読者から支持を得られそうにはないだろう。そのトリック自体も、比較的早い段階で明らかにされ、実はプロット上もさほど重きを置かれてはいないようだ。
 この時期の作品らしく、プリーストリー博士は土曜の例会で登場するだけで、登場するのも遅いし、場面も限られている。捜査の中心人物はむしろワグホーン警視であり、プリーストリー博士の助言を受けつつも、最終的に謎解きをするのもワグホーン警視だ。博士は、一酸化炭素発生の仕組みを洞察し、秘書のハロルド・メリフィールドに現場で実験をさせて実証してみせるが、名探偵らしい見せ場はさほどない。
 真犯人も動機も容易に想像がつき、謎解きとしての醍醐味に乏しいし、後期の作品らしく、中間部には退屈な尋問シーンと土曜の例会での議論が続き、ストーリーも起伏に富んでいるとは言いがたい。ただ、フランシス卿の性格描写はそれなりに面白いし、その他の登場人物たちの描写も後期の作品にしてはまあまあ描けているほうで、この時期の作品としてはまだ読めるレベルの作品と言えるかもしれない。



                  Twice Dead
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