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ジョン・ロード『代診医の死』が「2018本格ミステリ・ベスト10」の第8位に

 ジョン・ロード『代診医の死』(論創社)が『2018本格ミステリ・ベスト10』の第8位にランクインしました。これまで我が国ではなかなか評価を得られなかったロードの作品に高い評価をいただいたのは画期的なことと思っています。
 読んでくださった読者の方々はもとより、ROM叢書からの刊行にご尽力いただいた故加瀬義雄氏、須川毅氏、「論創海外ミステリ」からの刊行をお誘いくださり、丁寧な編集作業をしてくださった論創社の黒田氏にあらためて厚く御礼申し上げます。


               代診医の死


 なお、この場を借りての余談ではあるが、一つ触れておきたい。
 『オシリスの眼』(ちくま文庫)に寄せた私のあとがきに対して、心外なリアクションを時々受ける。そこでの私の主旨は、トリック重視型の本格作品が主流となったことで、これに慣れた読者の多くもその視点からフリーマンの作品を評価してしまうために、ロジック重視型のフリーマンの作品の特長が見えなくなる、という点にあった。視点を切り替えることでフリーマンの作品のよさを味わってほしいというのが私の主旨で、ロジック重視型の作品を手放しで称賛し、トリック重視型の作品をそれより低劣なものとみなすような主張をしたつもりはない(当たり前だが、どちらのタイプにも長所も短所もあるというものだろう)。ちなみに、(これは論創社の黒田氏とも話したことだが、)『代診医の死』のような、まさにトリック重視型の作品を積極的に紹介していることからも、私がそんな「本格ミステリ」観を持っていないことは明らかというものだろう。
 ところが、そうした意味に曲解して異見を述べる人が時折いるようなのだ。単純な誤解なのでよく読んでほしいと言えば、それだけのことかもしれない。しかし、敢えて穿った見方をすれば、そうした「誤解」には、トリック重視型の視点で「本格ミステリ」を評価することに慣れ、これを暗黙のうちに当然視してきたために、異なる視点での評価があり得るという盲点を突かれたことに対する反感が潜んでいるように思えることもある。ちょうど、『オリエント急行の殺人』の思いがけない結末に「アホにしか分かりっこない」と感情的な反応を示したチャンドラーのように。案外、そうした読者は、フリーマンの作品を「たいしたことはない」と訳知り顔に割り切ってきた人が多いのではないだろうか。あとがきでも触れたが、むしろ、トリックの出来栄えで作品を評価する視点に偏り、ロジック重視型の作品を正当に評価できない「本格ミステリ」観のほうこそ反省を促されるべきものではないかと思える。平たく言えば、問題の所在は、トリック重視型の「作品」にあるのではなく、「評者」にあると言うべきだろう。
 ふとそんなことに触れたのは、『本格ミステリ・ベスト10』の「座談会」で、私がロジック重視型の作品を「無批判に称揚」し、「プロット重視型」(「プロット」というのはトリックより広い概念で、ロジック構築もプロットのうちなので、表現として適切か疑問だが)の作品を「ディスる」ことをしたと語っておられる文芸評論家がいるからだ。こんなことを今さら噛んで含めるように説明するのも憂鬱な限りなのだが、同様の誤解を抱く人もおられるといけないので、敢えて触れた次第である。
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No title

「オシリスの眼」読みました。
「視点を切り替えることでフリーマンの作品のよさを味わってほしいというのが私の主旨」。普通に読めば、そう読めましたよ。「ディスる」なんて受け取るのは読解力がないですよね。
といっても、私が「オシリスの眼」を楽しく読んだかというと、退屈ではないんだけども、「面白い!」と思う点はあまり感じなかったんですよね。う~ん、なんでだろう。演出の仕方が好みではないのかなぁ。キャラがたってないから?
でもクロフツは好きだしな。もう少し考えます。
イギリス物では、バークリー、レジナルド・ヒルが好きなので、基本的には好みでないのかも。

私もこれは「読解力」の問題だと受け止めています。
プロの文芸評論家とされる方がこんな読解力で本や人の意見を批評したり、ランキング本で点数を付けているのだとすれば由々しきことではないですかね。

追記
作品への評価は人それぞれですし、それでよいのではないでしょうか。特にコメントすることはありません。
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