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ジョン・ロード“Family Affairs”

 “Family Affairs”(1950:米題“The Last Suspect”)は、ランスロット・プリーストリー博士が登場する長編。『代診医の死』の前作に当たる。

 ミックルオーヴァーという村に駐在するリチャード・ランガム巡査は、レンドミルへ向かう道を自転車で走っている途中、溝にはまった車を見つける。車は左側を下にして溝にはまっていて、右側の窓から車内を覗き込んだランガムは、ガラスの割れた左側の窓から中に水が入り込み、明らかに死んでいる運転手の顔まで達しているのに気づく。
 そこへ、ティン・ホイッスルを吹きながら幌馬車を走らせ、求めに応じて音楽を奏でて小金を貰うウォーブリング・ウィリーが通りかかる。ランガムはウィリーの助けを借りて車内から男の死体を引き上げる。ウィリーの証言では、その車はしばらく前にウィリーの幌馬車を追い越していったが、運転手は酔っていたようで、隣に若い女性が乗っていたという。
 所持品から、男はレパード・ビール酒造のエドワード・ドレイトンと分かる。ドレイトンは集金のため酒場を回っていて、その道のカーヴを曲がり切れず、溝にはまったと思われた。だが、車の中からは集金したお金の入ったバッグは見つからず、血まみれの女物の手袋が見つかる。
 地元警察は、スコットランド・ヤードの支援を求め、ジェームズ・ワグホーン警視が捜査を担当することになり、ドレイトン家の複雑な関係が次第に明らかになっていく。エドワードはレパード・ビール酒造の社長、エイルマー・ドレイトンの一人息子だが、最近、ミュリエル・ゲイウッドという女性と婚約したばかりだった。
 エドワードの死をゲイウッド家に伝えても、ミュリエルの所在ははっきりせず、彼女の婚約相手もエドワードと従弟のジャスパーのどちらになるか微妙だったことも明らかになる。エイルマーはエドワードを自分の後継者と考えていたが、実はエドワードは仕事に熱心ではなく、ジャスパーのほうが事業運営がうまかった・・・。

 ロードの後期作品らしく、ストーリー展開は緩慢で起伏に乏しい。ただ、中盤でレナード・タマー卿殺害事件という、最初の事件とは一見無関係と思える第二の事件が発生し、それが次第に第一の事件と関係していることが明らかになっていく。普通なら第二の事件の発生で中だるみを防げそうなものなのだが、これまた展開が緩慢で、ちっとも盛り上がらない。
 いずれの事件も、それぞれの家庭内の複雑な人間関係が原因であるように思われ、それが英版の原題の由来となっている。ところが、一見複雑そうに見える人間関係も、人物描写が薄っぺらなために、ちっとも面白味がなく、まるで紙人形を配置しているみたいだ。
 これまた後期の作品らしく、本作でも、プリーストリー博士は要所要所で助言を与えるだけで、最終的に謎解きをして事件を解決するのはワグホーン警視だ。ただ、この作品の面白いところは、プリーストリー博士が間違いを犯し、ワグホーン警視の捜査も方向性を誤ってしまうところにある。
 博士が間違いを犯すのはなにもこれが初めてではなく、“The Davidson Case”のような前例もあるのだが、先入観にとらわれて重要容疑者の存在と動機が盲点になってしまうという設定が、作者が本作のテーマにしたかったことのように思われる。ただ、それも謎解きのプロットとしては拍子抜けで、特に意外性もなければ、テーマ自体もさほどアピール性もなく、どっちつかずの凡作に終わってしまったとしか言いようがない。
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