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R・オースティン・フリーマン『ソーンダイク博士短篇全集』が刊行予定

 『ソーンダイク博士短篇全集(仮)』は、リチャード・オースティン・フリーマンの創造したジョン・イヴリン・ソーンダイク博士の登場する全中短篇42篇を集大成するものであり、2020年から、国書刊行会より全三巻で刊行される予定です。
 『オシリスの眼』、『キャッツ・アイ』(以上、ちくま文庫)、『ポッターマック氏の失策』、『ニュー・イン三十一番の謎』(以上、論創社)など、近年、代表的な長篇の紹介が相次ぎ、次第に読者の関心が高まるとともに、シリーズの全貌が明らかになってきたところであり、この機会に中短篇をまとまった形で紹介する意義は大きいと考えております。
 「あらゆる時代を通じて最も偉大な法医学者探偵」(クリス・スタインブラナー&オットー・ペンズラーEncyclopedia of Mystery and Detection)とされるソーンダイク博士は、1907年に長編『赤い拇指紋』でデビューしました。この長篇である程度の手応えを感じたフリーマンは、当時の人気スリック雑誌の一つ、〈ピアスンズ・マガジン〉にソーンダイク博士の短篇シリーズ8篇を売り込み、1908年12月号の「青いスパンコール」を皮切りに連載を開始しました。
 中短篇を通じて知ることのできるソーンダイク博士は、シリーズ全体のほぼ前半の時期に限られるのですが、脂の乗った時期の傑作が集中していて、長編以上にトリックの創意工夫が顕著であり、カーター・ディクスンに影響を与えたとされる密室ものの傑作「アルミニウムの短剣」、レイモンド・ボンド編『暗号ミステリ傑作選』に選ばれた暗号ミステリの傑作「パズル・ロック」をはじめ、不可能犯罪、毒物、アリバイ、暗号など、謎解き推理小説における様々なジャンルの代表的傑作が目白押しとなっています。
 科学的実証性を重んじたフリーマンは、作中のトリックや仕掛けの大半を自ら実験して実効性を確かめただけでなく、自ら描いた図版のほか、髪の毛や綿埃などの顕微鏡写真、印章や足跡の石膏型などの証拠品の写真を多くの短篇に挿入しました。
 ところが、雑誌掲載時に掲載されていたこれらの写真の多くは、単行本には収録されませんでした。スケッチや図版を別にしても、全42編の中短篇中、実に半数近い20篇に顕微鏡写真などの写真が挿入されています。このうち、単行本に再録さたれ写真は、第一短篇集『ジョン・ソーンダイクの事件記録』英チャトー&ウィンダス社初版(1909)収録の3篇と、『パズル・ロック』英ホダー&スタウトン社初版(1925)収録の1篇のみです。そのほかにも、単行本では、写真をイラストに差し替えたり、図版を簡略化するなどの手を加えられた例があります。
 また、〈ピアスンズ・マガジン〉の掲載作には、全篇、当時の第一線の挿絵画家による挿絵が加えられていました。なかでもよく知られているのが、計14作で挿絵を担当したヘンリー・マシュー・ブロック(1875―1960)で、ドロシー・L・セイヤーズは、「おそらく小説に登場する最もハンサムな探偵」(Great Short Stories of Detection, Mystery and Horror(1928)の序文より)とソーンダイク博士を評しましたが、この評にはブロックの挿絵の影響もあるでしょう。
 本全集では、〈ピアスンズ・マガジン〉掲載時に挿入された写真、図版、挿絵は原則としてすべて収録することとし、同誌に掲載されなかった作品については、可能な限り、他の初出誌や初期の刊行本から挿絵を収録する方針です。
 この全集を通じて、英国推理小説作家の重鎮として古典期から黄金期にかけての本格謎解き推理小説を牽引したフリーマンの作品の魅力を知っていただくとともに、後世の作家たちに与えた巨大な影響の片鱗に触れていただくことができれば幸いです。


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