著者の署名にもいろいろ

 著者の署名入り本を幾つか紹介してきたけれど、同じ著者の署名入り本でも、書き込まれるにはいろいろな経緯がある。
 エラリー・クイーンは、編集者・アンソロジストの立場で出版に自ら携わっていたこともあり、通し番号の付いた記念出版本などに署名をする機会が多かったようだ。このため、意外とクイーンの署名入り本は市場によく出回っているのを見る。
 いわば、1番から○○○番まで番号の付いた本の扉などに、はい次、はい次、という感じで署名をしていった本というわけだ。以前紹介したバーザンとテイラーの“A Book of Prefaces”も同じ種類ということにになろう。
 以下は、エラリー・クイーンの“The Detective Short Story: A Bibliography”に書き込まれた署名。

エラリー・クイーン


 次は、ロス・マクドナルドの“A Collection of Reviews”に書き込まれた署名。

ロス・マクドナルド


 これらはいずれも通し番号がついている。こうした署名入り本は、数が多いのもさることながら、相手が誰かを考えずに、いわば商業的な意図で署名したものだからか、さほど値打ち物とは見なされない傾向があるようだ。

 これに比べると、友人など特別な相手に対して、その本を贈呈したり、あるいは求められて署名したりした本は、希少価値があるといえる。特別な献辞などが書き込まれていると、まさに唯一無二の本ということになろうか。なかには、以前紹介したヘレン・マクロイがアルフレッド・アイゼンスタットへの献辞を書き込んだ本のように、その本の成立の経緯に触れているようなものもある。
 以下は、スタンリイ・エリンが“The Specialty of the House and Other Stories”に書き込んだ献辞。

スタンリイ・エリン


 次は、ジョン・ディクスン・カーが『エドマンド・ゴドフリー卿殺害事件』にクリスマスの贈呈本として書き込んだ献辞。

ディクスン・カー


 自分の私蔵本に書き込んだ署名も時にはある。この場合は、単に署名だけだったり、場所や日付が付記されているような簡潔なものが多いようだ。以前紹介したマクドネル・ボドキンの“Paul Beck The Rule of Thumb Detective”もこれに当たる。
 以下は、エドマンド・クリスピンが『永久の別れのために』のペーパーバック版に書き込んだ署名。チェルトナムという地名と年が書き添えてある。

エドマンド・クリスピン

 
 署名入り本に特別こだわりがあるわけでも、集めているわけでもないのだけれど、たまたま廉価で市場に出ていると、つい買ってしまうことがある。手元にあるものの大半はそうやって入手したものなのだが、それでも、そこに添えられたメッセージから、時として、著者の肉声が聞こえてきそうな親しみを感じるのも事実である。
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