ピーター・ゴドフリー ロルフ・ル・ルーの事件簿:追記

 以前書いた記事はhttp://fuhchin.blog27.fc2.com/blog-entry-90.html

 ゴドフリーのロルフ・ル・ルー物には単行本に未収録の作品が幾つか残っているようだ。エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン掲載作品で気づいた限りでは、1951年3月号収録の‘A Dagger of the Mind’と1952年4月号収録の‘Shoemaker's Last’がある。南アフリカで刊行された雑誌等にはほかにもまだ残っているものがあるかもしれない。
 上記二作はいずれもなかなかの佳作であり、クリッペン&ランドリュが“The Newtonian Egg and Other Cases of Rolf le Roux”(2001)でこの二篇を再録しなかった理由はよく分からない。
 ‘A Dagger of the Mind’は、消えた凶器の謎を扱っている。男が四階の部屋に侵入して被害者の喉を鋭利な刃物でかき切って殺害するが、第三者に見つかってしまい、外から鍵をかけられて犯行現場から逃げられなくなる。警察が来て、被害者の死体とともに犯人を確保するが、どこを探しても凶器らしきものが見つからない。犯人はほかにいるとうそぶく男の主張に、ジュベール警部は叔父のロルフ・ル・ルーに助けを求めて現場に連れてくる。凶器の隠し場所の面白さもさることながら、鋭利なナイフという、凶器に対する先入観に潜む心理的盲点をプロットに活用しているところが巧みだ。
 ‘Shoemaker's Last’は、片方だけ靴を履いていた被害者の謎を扱っている。靴屋が殺されて藪の中に遺棄されているのが発見されるが、靴屋はなぜか左足の靴だけを履いていた。履いていた左の靴がきちきちだったことから、右足の靴は自然に脱げたのではなく、犯人が持ち去ったと思われた。事故で左足を失い、松葉づえをついていた死体発見者のホームレスが容疑者に浮上するが、ル・ルーは靴の謎を手がかりに真犯人を特定する。犯人がなぜ両方の靴ではなく片方だけを持ち去ったのか、その動機の解明がプロットの要をなし、まるでエラリー・クイーンの国名シリーズを連想させるような推理が面白い。
 この二篇を合わせても、わずか15作にすぎないが、実に楽しい粒ぞろいのシリーズであり、ほかにも埋もれている作品があるのなら、ぜひ発掘して新たな短編集にまとめてほしいものだ。


EQMM1951年3月号

EQMM1952年4月号
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